米倉涼子「リーガルV」は「ドクターX」より長続き? キーワードはチームプレイ

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軽め・明るめ、コメディー強化

 そう、今度は延々、悪口を連ねてきながらも、この「リーガルV」を「ドクX」のように早々と「見ずにすませる」認定できない理由は、チームプレイ体制への変更の他にもあって、それは「ドクX」よりさらにコメディー色が強いこと。

 米倉が女優として現在ただいまのポジションまで上り詰めるきっかけになったのは、同じテレ朝・木9の「黒革の手帖」(もう14年も前か……)。そこから「けものみち」「わるいやつら」「交渉人」と、同じ枠で出世を続けるにおいては、作品はもちろんのこと、彼女の芝居もシリアス系でした。

 他局の他の枠では、たとえばTBSがリメイクした「奥さまは魔女」(やっぱり14年前)では、作品はコメディにして米倉はコメディエンヌだったけれど、これは見事な失敗。直後に主演した「黒革」が大当たりしたせいもあってか、特にテレ朝のドラマでは作品も芝居も軽い・明るい系より重い・暗い系に偏りがちになっていたわけです。

 その流れが変わったのは、6年前に始まった「ドクターX」。権威・権力に必ず勝たなきゃいけない孤高の外科医という筋立て・役柄には重さ・暗さが不可欠ながら、そのままストレートにつくってストレートに演じりゃ「おんな白い巨塔」になっちゃうからか、ご存知のとおりコメディー要素がかなり盛り込まれて、米倉の芝居でも軽さ・明るさが広く世に受け入れられた。

 この軽さ・明るさがさらに一歩進んだのが「リーガルV」で、作品としては、まず舞台を医療から法律に変え、テーマを生死という絶対的なものから正義という相対的なものに軽量化。キャスティングを見ても、米倉の味方サイドの重鎮が岸部一徳(71)から高橋英樹に、敵サイドの重鎮が伊東四朗(81)・西田敏行(70)から小日向文世(64)という具合に、軽め・明るめ方向へと軸足が動いてる。

 初回でも、どれだけ笑えるかはともかく、ギャグは大ネタ小ネタともにテンコ盛りで、米国産の名作「アリー my Love」が記憶の底から浮かび上がってくるほど……というのは、すみません、嘘だけれど、少なくとも制作陣の頭の中には「リーガルハイ」がなかったらおかしいと思えるレベルではある。

 声に出して読みたいタイトルごっこをしてみるなら、「りいがるはい」と「りいがるぶい」の差は極小。法律監修方面からは最初に商標の類似リスクが指摘されなかったのかね?

「ドクターX」-「白い巨塔」+「リーガルハイ」=「リーガルV」
……こんな計算が簡単に成り立つと考えるほどお人好しじゃないけれど、成り立ってくれるのならありがたいと思うくらい、ここんところの連ドラにはガッカリし続けてる身ではあり。少なくとも今期においては「リーV」、期待せざるをえません。同じ法律モノと言えば同じ法律モノである特定外来種の「SUITS/スーツ」(フジ系・月9)、アッチの方は、第1話を見終えてすぐ、連ドラ予約を解除しちゃったからなぁ。

 いや、「リーV」への期待は今シーズンに限りません。これが当たってシリーズになるのなら、その分、このさき「ドクX」の新作を目にする確率が下がるからね。

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999〜2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

週刊新潮WEB取材班

2018年10月19日掲載

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