「パワハラ」なぜ増えた? 15年で相談件数は10倍以上 “加害者にされた”訴えも

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スクリーンセーバーの家族の写真が

 では、推定加害者にはどういう人が多いのか。

「最近は大声で叱責するというタイプは減って、ネチネチ責める人が増えている。実は、まじめで仕事ができ、心配性の人が多く、仕事ができるがゆえに、できない部下を追いつめてしまうのです。しかし、このような人は、できない人への接し方がわからないだけなので、部下の管理ができない、という烙印を押されるべきではないと思います」

 とはいっても、部下が声を上げれば、その日から推定加害者である。しかも、

「いまは身近なことで、人事部にパワハラだ、セクハラだと訴える人が多い。会社のパソコンのスクリーンセーバーを家族の写真に設定していたら、“結婚していない人にとって苦痛だ、パワハラだ”と訴えられた例も。上司にキャバクラに連れて行かれたのを、パワハラだと相談してきたこともあります」

 部下や後輩をもつ者にとっては、受難の時代だというほかない。

「上司が仕事をしにくい時代だと思います」

 と率直に言うのは、パワハラやセクハラ問題を得意とする田中康晃弁護士(田中・石原・佐々木法律事務所)。その言葉の背景だが、

「パワハラが叫ばれ出したのはここ10年ほど。きっかけの一つは、06年4月に始まった労働審判制度でしょう。労働関係の紛争を迅速、適正かつ実効的に解決するための制度で、労働者が権利を主張しやすくなったんです。加えて、SNSを通して“かわいそう”な人に共感し賛同するハードルが下がった。結果、いまではパワハラは“言った者勝ち”となりかねず、裏も取らずに社内で認定されてしまうケースもあります」

 田中弁護士は「ゆゆしき問題だ」と話すが、そう嘆いたとて、意図せず加害者になってしまっては仕方ない。次回より、ケーススタディを通し、どうすれば加害者にならずに済むか、田中弁護士とともに考えたい。

(2)へつづく

週刊新潮 2018年10月11日号掲載

特集「専門弁護士が教える『パワハラ』『セクハラ』告発されないための『ケーススタディ』」より

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