“富田林逃走”の樋田淳也容疑者、観光地に立ち寄る余裕も 「兵站基地」になった道の駅

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寄り道

 ツーリストへの変身が奏功し、警察の手が迫っている気配は全くない。それどころか、「絶景を誇り、世界中のツーリストが集う聖地」(前出の石田氏)であるしまなみ海道を楽しむことさえできた。もはや、俺を見つけることなどできはしまい――そんな余裕が逆に隙となって、あまりに大胆な万引き、すなわち逮捕の引き金となったのだろう。

 ちなみに、上関海峡は幹線道路から外れた岬のほうにあり、いち早く少しでも遠くへ逃げたいと考えるはずの「普通の逃走犯」であれば、決して行かない「寄り道先」である。その上、

「樋田は近くにある周防大島(屋代島)という島にまで足を延ばし温泉に浸かったり、広島県では原爆ドームにも寄っています」(警察関係者)

 同島で樋田容疑者と接した、道の駅「サザンセトとうわ」の岡崎竜一支配人の証言。

「倉庫で寝泊まりさせてあげると、お返しに草むしりをしてくれた。人柄も良く、全く逃走犯とは気付かなかった。あそこまで演技できるものなのか……」

 犯罪心理学者の出口保行氏はこう分析する。

「道の駅の店員と10分も話し込んでいたということから、樋田容疑者は逃走に自信を持っていた様子が窺えます。長期間逃げることに成功し、精神的に相当な余裕が生まれ、自己肥大感を持っていたのではないでしょうか。もともと、彼の犯罪歴を見ると、同じ犯罪を繰り返すのではなく、さまざまな犯罪に手を染めている。多種方向犯と呼ばれ、このタイプの犯罪者は自己中心的で、トラブルは犯罪で解決すれば良いと考える傾向が強い。元来の自己中心さに加え、逃走が上手くいっていたという驕(おご)りから、彼は油断していたのでしょう」

 釣り竿まで持ち運んでいた樋田容疑者。そんな「優雅な逃走犯」が、富田林を発ち跋扈(ばっこ)していたかと思うと……。

 背筋が寒くなる、二度と起きてほしくないトンだ災難だった。

週刊新潮 2018年10月11日号掲載

特集「しまなみ海道と海峡巡りで物見遊山 『道の駅』が兵站基地だった『富田林署の樋田淳也』逃走ルート」より

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