1作品の予算は10億円の予算! 撮影現場“潜入”エピソード 爆笑「中国抗日ドラマ」対談

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「中国抗日ドラマ」は爆笑コメディ――西谷格×岩田宇伯(2/3)

 中国で老若男女から人気を集める「抗日電視劇」、いわゆる“反日ドラマ”の荒唐無稽さを笑い飛ばす対談。語り合っていただくのは、実際にドラマに出演した経験を持つライターの西谷格氏と、『中国抗日ドラマ読本』の著書がある岩田宇泊(たかのり)氏である。政府の監視が厳しいかの国だが、「抗日ドラマの枠組みのなかであれば検閲が緩くなり、ある程度許されてしまう」との岩田氏の解説に、「反日を隠れ蓑にして検閲を突破しようと、涙ぐましい努力をしているわけですね」と西谷氏も納得。普通のドラマにはない、“ならでは”の表現が次々と明かされる。

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西谷 他方、日本の先を行く表現もありますか?

岩田 先なのか否かはともかく、やり過ぎて新しい世界に到達してしまったのが「異鎮」(画像1)という河北省の村を舞台にした作品です。日本兵が村人たちに次々と残虐な方法で殺されまくるというスプラッターもの。漏斗を押し込まれた口に大量の水が注がれて拷問を受ける、岩で頭を乱打し続ける、あるいは小刀で喉元を掻き切るなど、やりたい放題。大量の血糊が使われていました。この作品は4K映像で撮影したり、テレビ画面を分割して二つの場面を同時に表現するなど先進的な試みをしているドラマだったのですが、凄惨すぎて、放送停止になってしまいました。

西谷 それは結構、営業的にはキツいですよね?

岩田 ええ。他の抗日ドラマと同様、全体が36話と長いのに、まだ10話しか進んでいませんでしたから。

西谷 反日ドラマには、予算も潤沢に付くようですね。

岩田 たっぷりかどうかは別にして、1作品あたりの予算は10億円近いと聞いたことがあります。日本軍の暗号解読に成功した人物を共産党の基地に送り届けるという任務を描いた「不可能完成的任務」に出演した呉奇隆(ウーチーロン)(画像2)。彼は台湾のアイドル出身でいまやトップ俳優のひとりですが、年収は20億円を下らないとか。こうした国民的俳優が数多く出演しているのも、近年の抗日ドラマの特徴です。ちなみに、この作品の英題は「Impossible Mission」と、どこかで聞いたことがあるようなタイトルです。

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