また揉めている 黒川紀章の奇天烈「カプセルタワー」

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 SFの世界に飛び込んだかと見紛うその外観は“奇天烈”というほかない。

 建築家の故・黒川紀章氏が設計し、銀座8丁目にそびえ立つ「中銀カプセルタワービル」である。完成は1972年。140戸の交換可能なカプセルがそれぞれの住居となっていることから建築界で「メタボリズム」の代表作として名高い。しかし、近年はアスベストの飛散や施設の老朽化、建て替え問題など数々のトラブルに見舞われている。

「これまでにない解体の危機に瀕しています」

 とは、同ビルの保存・再生プロジェクト代表・前田達之氏(51)だ。

「6月、中銀グループが所有する底地や16戸のカプセルを不動産会社などに売却したのです。7月、その不動産会社が裏手のビルを含めた一帯を再開発したい旨を管理組合理事会に通達してきました」

 これまでも、建て替えか保存かの議論が長年繰り返されてきたものの、結論は未だに出ていない。ビル保存派は90人強いる所有者の3割ほど。そこで、不動産会社の関係者が所有者に出向いて“売ってほしい”と持ちかけているという。

「12月の管理組合総会で、解体に関する議案を提起するため、議決権を集めようと動いているのです。さらに、彼らはオーナーが第三者へ借地権を譲渡することを認めず、事実上、カプセルを売れない状態にして、1カプセル500万円で買うという。そこで世間に少しでも関心を持ってもらうため、8月下旬からオンライン上で保存のための署名運動を行っています」(同)

 中銀グループの担当者は、

「最近も水道管から漏水して、歩道に飛び散りました。カプセル崩落の危険性もあります」

 いずれにせよ、見納めの日が近づいている――。

週刊新潮 2018年9月20日号掲載

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