“失う恐怖”に答える、泉アキの「両胸にメスを入れた私の結論」 私はこうして「乳がん」から生還した

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 講演に行くと、よく若い方から“乳房を失うことに恐怖はありませんでしたか”と聞かれますけどね。そんな時は、私は命がなくなっては怖がることもできない、命あっての恐怖なのだから、迷わず手術を受けてと言っています。2度の乳がんを経験し、両胸にメスを入れた私の結論は、手術を怖がったり嫌がったりする必要はないということ。昔はごっそり乳房がなくなってしまう手術も多かったけど、今は「乳房再建術」にも様々な方法があって、見違えるくらい綺麗にしてくれる病院も増えていますから。

 1度目のがんは47歳の時、自分でしこりを見つけました。体を洗う時に胸を確認するようにはしていたんですが、この時は左胸の一番下、最も肉が溜る部分で上から触ってもよく分からない場所でした。それでも見つけることができたのには理由があるんです。奇しくも、その日は乳がんになった夢を見て目が覚めた。慌てて胸を触り、丁寧に確認をした結果だったのです。

 実際、病院へ行くとステージIIで手術で左胸を4分の1くらい切ると言われました。乳房温存手術を行い時間は2時間半ほど。私の場合、がん細胞が乳管などに留まる「非浸潤性がん」だったので、退院してからはホルモン治療を行いました。それも1年で終わり、夫とマウイマラソンを完走できるまで回復したんです。

 その後、半年ごとに検査を受けていましたが、お医者さんから“術後10年経ったら検査は1年ごとで構わない”と言われていました。そんな先生の言葉を思い出し、あと1週間で10年経つなぁとふと考えて、自分の胸を触診していたところ、再びしこりを見つけてしまった。56歳で右胸にも乳がんが出来ていたのです。

 2度目も乳房の温存手術を受けて、幸い再発はありませんが、今でも半年に1回は検査を受けるようにしています。2度目の手術から5年経ち、お医者さんから検査は1年に1回でいいと言われても、私はこれまでの経験を病院に伝えて、こまめに検査をしますと宣言しています。確かに、マニュアル通りなら、多くの人は年1回の検査で構わないかもしれないけど、それが自分に当てはまるとは限らない。自分の命は自分で守るという自覚が大切です。

 それに乳がんになっても悪いことばかりではありません。家族はとても心配してくれるし、主人は家事をよく手伝ってくれるようになった。互いの死を意識したことで、改めて夫婦の大切さを実感できました。

 実は定期検診でお腹を再度調べましょうとなって、数日前にCT検査を受けて結果待ちの状態ですが、がんが見つかっても、また取ればいいやと不安は感じません。分かる前から考えたって仕方ない。3度目のがんになっても大丈夫。そう思えるようになりましたね。

週刊新潮 2018年9月13日号掲載

特集「『さくらももこさん』の命を奪った『乳がん』に打ち克つ知恵」より

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