フジTVは“非常事態”を突破できるか――秋改編を読み解く

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■成功の可能性は・・・? 【グラフ②&③】

 では3回の改編で、フジは非常事態を突破できるだろうか。
 結論から言えば、五分五分と言ったところだ。

 四半期ごとのP帯視聴率をトレースしてみよう。
 2013年から2017年上半期まで、視聴率は激しく下がり続けていた。ところが去年の秋改編後、下落幅は縮小し始めた。そして今春の改編後の4~6月期、微小ではあるが上昇に転じている。下げ止まり感が出てきており、過去2回の改編はホップ・ステップと見ることも出来る。

 最大の要因は、ドラマが改善し始めた点。
 看板の月9が去年夏の『コード・ブルー』を例外に、右肩下がり傾向が続いていた。他2枠も緩やかな下り坂を進んでいた。ところが今年4月クールから、明らかに反転し始めている。夏クールでは、2枠が二桁に乗せる勢いとなっている。

 ただし成功率“五分五分”と言ったのは、バラエティに明確なプラス材料が出ていない点だ。

 P帯は一週間で28時間。フジはその8割ほどをバラエティとしている。つまりバラエティが強くならないと、面としての編成は数字が上がってこない。
 ここ数年、フジは様々な新番組を繰り出してきた。ところが同ジャンル週間ベスト10に入ってくるような強力な番組は、今のところ1つも誕生していない。

 今回の改編でも、バラエティ4番組を終了させ、新番組を投入する方針だ。
ところが改編発表の席上では、3番組しか発表しなかった。番宣効果も含めると、この席上で伏せておく意味は全くない。新番組の決定が難航している可能性もある。
 最も比重の大きなバラエティが、残念ながらはっきりしない。これでは“非常事態の突破”確実とは簡単には言えない。

 同局は5月の決算発表で、広告収入は2018年度もマイナス3%ほどと予想した。厳しい状況はまだ続くと見ている一面もありそうだ。

 今や“振り向けばテレ東”状態の同局が、かつての栄光を取り戻せるか否か。奮起を期待したい。

メディア遊民(めでぃあゆうみん)
メディアアナリスト。テレビ局で長年番組制作や経営戦略などに携わった後、独立して“テレビ×デジタル”の分野でコンサルティングなどを行っている。群れるのを嫌い、座右の銘は「Independent」。番組愛は人一倍強いが、既得権益にしがみつく姿勢は嫌い。

週刊新潮WEB取材班

2018年9月9日掲載

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