北朝鮮で滋賀県の男性が拘束 2年間抑留された元“日本人スパイ”が今後を予測

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北朝鮮との交渉に冷淡な政府

《私が帰国するに当たって、北朝鮮から謝罪を求めると同時に身の代金も要求されたのではありませんかと尋ねましたところ、はい、そういうことがありましたと言われましたので、それではどのぐらいでしょうか、一億円ぐらいですかと聞いたら、いや、そんな多くはないよと言いましたので、一転して私は、二千万円ぐらいではありませんかとお聞きしました。まあそのぐらいでしょうということでしたので、まだ払っていませんか、もう払いましたかと聞きましたら、まだ払っていませんということだったので、いや、それは払う必要はございませんよ、特にこれは私自身の問題でもありますから、もし一けた下がって二百万円ぐらいであれば、私が分割払いでも自分のお金として払いますと申し上げました》

 杉嶋氏が2年2か月も北朝鮮で拘束され続けたのは、日本政府が身代金の交渉に全く応じなかったのが原因だったという。

「特に最初の1年半は、何もしてくれませんでした。私は公安や内調から協力を依頼され、愛国心から活動を行っていました。しかし、そんな私は公安や内調に潜んでいた裏切り者の情報で追い詰められ、まさに見殺し同然だったのです。帰国してからも、首相になられる前の福田康夫氏(82)に挨拶する機会があったのですが、福田氏は『君、いい経験をしたと思えばいいじゃないか』と笑いながら、私の左肩をぽんと叩きました。率直に言って、『この人は、それで私を励ましたつもりか』と怒り心頭に発しました。政界トップの感覚は、この程度のものかと呆れました。もともと政府に頼まれて情報を伝えたのです。『大変だったね』くらいは言っても、おかしくないはずですがね」

 そして杉嶋氏は「自分と同じように、滋賀県の男性が見捨てられるようなことがあってはならない」と強く訴える。

「幸いなことに、私が拘束されていた時よりも、北朝鮮の問題点は広く日本国民に知れ渡っています。滋賀県の男性は純粋な被害者であり、一刻も早い救出が必要だという世論の盛りあがりが必要です。私たち国民1人1人が政府に訴えかければ、どうしたって彼らも動かざるを得ません」

 だが菅義偉官房長官(69)は15日の記者会見で、北朝鮮当局に日本人男性が拘束されたことについて「事柄の性質上、答えることは控えたい」と説明を避けた。日朝交渉のカードに利用されなければいいのだが……。

週刊新潮WEB取材班

2018年8月23日掲載

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