あの容貌でも“信者1万人”に君臨 オウム麻原の「カリスマ性」を分析

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

サイコキラーの事件ファイル オウム真理教「麻原彰晃」――小田晋(3/5)

 オウム真理教があれほどまでに跋扈したのは、教祖・麻原彰晃元死刑囚のカリスマ性による部分も少なくなかった。以下は写真週刊誌FOCUSに掲載された精神科医の小田晋氏(故人)の寄稿で、タイトルはずばり「サイコキラーの事件ファイル 盲目の“孫悟空”教祖がまとったカリスマ性」。その素顔を読み解く。(※以下の記事はFOCUS 1999年5月26日号掲載時のもの)

 ***

――薬物で巧みに神秘体験を誘導し、シバ神の化身を自称したオウム真理教の教祖、麻原彰晃(本名=松本智津夫)。信者の中には、教祖の外見に惹かれ、入信した者もいたという。が、髪をだらしなく伸ばし、顔全体が髭で覆われたこの男のどこに魅力があったのだろうか。1万人の信者に君臨したカリスマ、麻原彰晃の対人操作能力の正体とは。

 やはり、皆さんが一番疑問に思うのは、なぜ、オットセイの化物のような麻原教祖に、あれだけ沢山の信者が心酔したのかということでしょう。無論、理由の一つは、前回お話ししたように、教祖が高いマインドコントロール技術を持っていたからなのですが、もう一つ、麻原教祖が強いカリスマ性をまとっていたことも否めない事実だと思います。

 実は、カリスマ性というのは、容貌にはあまり関係がありません。私も不思議に思っているぐらいなのですが、例えば、最近の新宗教の教祖様たちは、皆、特別なハンサムでも絶世の美女でもないことはご存じの通りです。それなのに彼らが、人の心を惹き付けるのはなぜなのか。彼らのカリスマ性とは、平成日本における重大な謎の一つと言えるのではないでしょうか。

 麻原教祖の場合、視力障害者だということがカリスマの源泉の一つだったのかもしれません。日本では、古来から視力障害者にある種の宗教的な威厳を認めてきたという土壌があるのです。「耳なし芳一」の物語にあるように、視力障害者は神に愛され、幽界と交信できる存在と見なされていたのです。現代社会が父親なき社会であることが、理由の一つかもしれません。信者たちが麻原教祖に厳父というイメージを求めていたということもあるでしょう。が、それ以上に彼をカリスマたらしめたのは、麻原教祖が持っていた対人操作能力だと思われます。彼は、信者を暗示に掛け、まるで催眠術師のように、相手の意識を操作しました。

 ある弟子をきつく叱り飛ばし、ある弟子には優しく接する。人によって態度を使い分けて、思うがままに操ることが得意だった。これは、ある程度、先天的なもので、人間が最後まで持っているのがこの能力なのです。動物で言えば、飼い猫は主人に甘えたり、すねたりして、自分の要求を通すのが上手ですね。

 そして麻原教祖は盲学校にいる時代に、この先天的な能力に磨きを掛けたのではないかと思っているのです。

次ページ:お釈迦様なき孫悟空

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。