AIエンジニアの年収は米国の半分… “五輪”で金メダルも出た「日本のプログラミング事情」

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教授が抱く危惧

 どんな問題が出るのか。

「そうですね……。東京のような街があります。山手線風のループと、それに様々な路線が連絡している状態を想像してみてください。これに対して、“正しく速く最短経路を弾き出すためのやり方を考え、プログラムに書きあげて提出してください”というようなものです。駅の数が全部で10しかないなら手で解けるでしょう。しかし、これが1千個、1万個になったら組み合わせが多くなって、大変になりそうだとわかりますよね」

 そのプログラムに従うと、例えば駅が50個までの場合には1秒で最短経路が出たから50点。しかし、駅が100個なら10秒経っても答えが出ないから罰点……。ごく簡単に言えば、そのようにして優劣が決められて行くという。

 他方、情報科学に長らく携わってきた筧名誉教授は、それだけにこんな危惧を吐露するのだった。

「今の日本で、大手と言われる企業は特に新人採用で、“あなたの能力を試すことができる仕事が待っている。だから来てよ”とは言わないですよね。去年、東大理学部情報科学科の萩谷(昌己)先生がアメリカへ調査に行って愕然とされたとのこと。あちらの大学でコンピューターサイエンスを専攻して卒業した人の数は、日本の情報科学や情報工学科卒の割合とそんなに変わらない。大きく違うのは、グーグルとか情報企業へ、しかも高給で採用されている点。会社の方は“ウチが今欲しいのはこういう人です。あなたはそれをどう実現できますか”と聞く。でも日本はそうなっていない。“このままでは日本は勝てない”と、萩谷先生は完全に悲観しておられました」

 冒頭の平均年収の差が現実を物語っている。国を挙げてIT国家にするんだ、高度IT技術者が必要だと言ってはみても、実体が伴っていないのではないかという告発である。

(下)へつづく

週刊新潮 2018年7月12日号掲載

特集「『国際情報オリンピック』の金メダル! 日本の天才中高生が見せた神業プログラミング」より

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