就活事情最前線 IT大手ヤフーは「デジタル+アナログ」で“いい人材を”確保する

IT・科学2016年6月14日掲載

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 今年は、6月1日に採用活動の選考が解禁になった。採用スケジュールが大幅に後ろ倒しになった昨年より、2カ月早くなったことになる。昨年に引き続き、「売り手市場」といわれていることもあり、企業は様々な方法で優秀な学生を確保しようと苦心している。

 ここ1、2年を見てみると、日程が変わったことにより前年を踏襲することができずに、採用フローをゼロから考え直した中小企業やベンチャー企業の存在が光った。

 以下は、ユニークな採用の、ほんの数例である。

「マージャンに勝ったら最終面接へ」「学生自らが面接官を選ぶ」「面接やめちゃいました採用」「『人狼』採用」「カフェテリア採用」「リクルートスーツ着用禁止」「えこひいき採用」「三つ星採用」……。

 企業の採用活動に詳しい横浜国立大学大学院准教授の服部泰宏氏は自著『採用学』のなかで、こうしたユニークな採用方法の数々を紹介しているが、新しい形を採用側がとっている理由をこう説明する。

「一見すると、話題を集めるための奇抜な方法のように見えますが、決してそうではありません。そこには通底するロジックがあるんです。それは、『我が社が必要としている人材を採りたい』ところから発想しているんです」

 それは、経済が右肩上がりに成長する時代の採用と、大きく違うと服部氏は言う。

「社員は常に新しい発想を求められている。そして時には、グローバルな世界でしぶとく戦わなきゃいけない。市場が限られ、“商売”が厳しくなった時代、各々の会社で求められている能力は異なるはずなんです。だから、漠然とした『優秀な学生』じゃなくて、『これに秀でている人材、これができる学生』と具体的になっていっている。そうした人材を見分けるために、独自な採用が生まれてくるわけです」

■ヤフーが行う「デジタルジャッジ」とは

採用学』では、実際に行われている、ユニークな採用の数々を、傾向の分析とともに挙げている。そのなかから国内最大のポータルサイトを持つヤフー株式会社の採用フローの一部を紹介しよう。(以下同書より抜粋)。

 ***

 エントリーシートは通常、採用担当者による主観的な判断によって評価が行われるか、大学名など特定の基準に従って機械的に評価されることが多い。この場合、評価者の主観的な判断によって、本来優秀であるはずの人材が落とされたり、他の評価者であれば合格にしていたような人材が落とされるといったことがかなりの確率で起こってしまう。そこでヤフーは、通常のエントリーシートの評価に加え、評価者の主観的判断を可能な限り排除するために、「デジタルジャッジ」というやり方を導入している。

 採用担当者は、過去の採用データを解析することによって、エントリーシートで記載された内容と実際の選考結果との関係性についてかなりの程度正確な分析結果を手にしている。実際に用いられている手法を書くわけにはいかないので、あくまで例にはなるが、たとえば「卒業時点で○○○(具体的なツールやソフトの名称)というツールを使いこなし、○○○(具体的な学会の名称)で報告している人は、採用後に優秀なエンジニアになる確率が高い」といった具合である。こうしたデータ解析結果に基づいて、エントリーシートにおける質問項目を設定することで、ピックアップするべき人材、この段階で落としてはならない人材を確実に検出するのである。

(中略)

 デジタルジャッジは、求職者群を効率良く落とすための仕組みでは決してなく、評価者の主観的な判断によって、本来優秀であるはずの人材が落とされたり、他の評価者であれば合格にしていたような人材が落とされる、といったことを排除するための仕組みだ。「誰を落とすか」ではなく、「絶対に落としてはならないのは誰か」という発想がそこにはあることを強調しておきたい。

■面接の回数はまちまち

 その後、採用担当者の面接→部門の社員による面接→人事と部門の責任者クラスの面接……と進んでいくのだが、ここにもいくつかの特徴がある。

 複数回の面接を実施するということ以外、具体的な回数は決まっていないのだ。これがヤフーの採用の第2の特徴となる。求職者の能力、特性、採用担当者とのやりとりに応じて、回数は柔軟に決定される。

 (中略)

 そして第3の特徴は、このようにして人事部門の責任者クラスの面接までクリアした後に、もう一度、採用担当者が求職者と「面談」を行うことだ。あえてこのようなワンステップを設けているのは、この段階での求職者の「心境」には、実に多様性があるからだ。

 既に入社を決意している者は問題ないとして、中には、その決断をつけかねている者もいる。

 (中略)

 求職者たちの心の揺れ動きにとことん付き合うことで、ヤフーに入り何ができるのか、そこに何を期待でき、何を期待できないのか、そうした期待のマッチングが実現するまで寄り添うのである。

 ***

 服部氏は、日本の企業が「曖昧で多義的な選抜基準」に重きを置きがちだと指摘する。

「コミュニケーション能力のある人って言いますが、饒舌な人がそうなんですか? 寡黙な人はそうじゃないんでしょうか? その他、エネルギッシュ、協調性、主体性、チャレンジ精神など、一見、プラスな要因に見えるものが、実は担当者による解釈の幅を生み、結局は本当にほしい人材とのズレを生んでしまうんです」

 服部氏は、採用の際、「何を見ないか」も重要だと言う。

「人の資質には、変わりやすいものと、変わりにくいものがあるんです。たとえば、第一印象、コミュニケーション能力(口頭・文章力)などは変わりやすい。逆に、変わりにくいものが、部下の鼓舞、野心、粘り強さなど。だから極端な話、育成のシステムが企業内にあれば、変わりやすい能力を見る必要はないわけです」

 さて、あなたの会社は、具体的にどんな人材を必要とし、そのために、どんな採用方法をとっているだろうか?

デイリー新潮編集部