金正恩が日朝会談で「日本のトンネル掘削技術」を、どうしても欲しいワケ

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アメリカの北朝鮮利権

 北朝鮮がアメリカと鉱山開発を共に行えば、経済制裁は解除され、レアメタルで巨万の富が転がり込む。確かにこれを実現するためには、なりふり構ってはいられない状況だろう。日朝会談に際し、日本側にインフラ整備計画の協力を打診、関心を買おうとすることは想像に難くない。

 しかしながら、日本人なら誰にでも分かることだが、そこに拉致問題という懸案事項が立ちはだかる。一方のアメリカは、なんと第2次大戦前から資本参加の“橋頭堡”を築いていた。

「それほど知られていませんが、アメリカは戦前、平壌にマーガリン工場を開設しています。日本の商社も資本参加し、日本語では『平壌穀産』と呼ばれました。旧満州からトウモロコシを輸入し、平壌でマーガリンに加工。パン食を好みだした日本の都市部住民を狙って販売しようとしたのです。ところが、最終的に日本の旧陸軍が平壌穀産を強引に接収し、日米関係が悪化した一因にも挙げられています」(同・専門家)

 アメリカにとっては、まさに“虎の子”の工場なのだ。それこそ朝鮮戦争時でも、平壌穀産が破壊されないよう、空爆などの攻撃を避けたのだという。

「そのため、現在でも北朝鮮の重要工場として稼働しています。こうした歴史からも、アメリカが朝鮮半島に強い関心を持っていたことが分かるわけです。そしてアメリカは、拉致問題のような特別重要な懸案事項を抱えているわけではありません。そこが日本との温度差を作っているわけです」(同・専門家)

 もし万が一、インフラ整備の利潤に目がくらみ、日本が拉致問題を棚上げしたとしたら、日本の世論が猛反発することは想像に難くない。

「日本でも日朝会談に期待する声は強いですが、日本の世論は拉致問題の解決を求め、北朝鮮側はインフラ整備の援助、協力を最優先に考えているとなると、全く話が噛み合わない恐れがあります。今も様々なチャンネルで下交渉が始まっていますが、実際に日朝会談を開けるほどの合意点が見つけられるのか、交渉は難航することが予想されます」(同・専門家)

 トランプ大統領は「ディール」、つまり「取引」という言葉を多用する。だが、安倍首相が「取引」に走ったとしたら、それこそ内閣が吹っ飛ぶだろう。やはり慎重な交渉が求められていることは言うまでもない。

週刊新潮WEB取材班

2018年7月4日掲載

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