早大政経が入試で数学必須化、それでも“ライバル慶應”には勝てないワケ

社会週刊新潮 2018年6月18日掲載

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歴史オタクの受験生は不利?

 早稲田政経の入試問題は、昔から難易度が高かったのは事実だろう。例えば、団塊ジュニア(1971〜74年生まれ)が受験した80年代後半から90年代前半、政経入試といえば、日本史・世界史の「カルトクイズ」と非難される難問珍問で“悪名”を馳せていた。また現代文の難易度が飛び抜けて高いなど、他大学には見られない特徴があった。

 偏った試験内容だったのは間違いない。だが、「何が何でも早稲田に行きたい」という私立文系専願の受験生が、政経を意識した勉強を続けていれば、“奇跡”が起きる可能性も存在した。

 最近は、内部進学や推薦入試の比率が、当時とは比べものにならないほど高まっている。とはいえ、少なくとも一般入試の問題では、そうした伝統は残っているようだ。

 だが今回の入試改革は、「数学は極めて苦手だが、日本史や世界史の用語集なら隅から隅まで暗記している」という受験生には、文字通りの逆風となる。

 誰が考えても「各教科をまんべんなく勉強している」オールラウンド型の受験生が有利になるのは明らかだ。政経OBが「自分の時代に数学が必須だったら、合格しなかっただろう」と驚愕の声を漏らす理由でもある。

 一体、早稲田はどのような目的から、今回の入試改革を断行するのだろうか。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏に訊いた。

「そもそも80年代から、政経学部の内部にも『社会科学を学ぼうとする受験生に対する入試が数学不問でいいのか』という疑問の声はありました。そして、やはり経済学科の方が問題視されていました。現代の経済学は物理学に基づく高度な数学を取り入れています。大学生レベルでも、微分積分や確率統計の知識が求められています。数学が極端に苦手な受験生でも、経済学科に入学できてしまうという現行システムがおかしかったのです。そういう意味においては、私は政経の入試改革は英断だと評価しています」

早大人気は凋落傾向

 早稲田と聞けば「私学の雄」との言葉を思い出す人もいるだろう。だが、今は慶應の人気が非常に高く、早稲田のイメージは凋落傾向にある。

「週刊朝日」(18年3月30日号/朝日新聞出版)は「早慶、いま人気の学部は 偏差値・志願者数を20年分析 2018大学入試」の記事を掲載したが、その中に次のような記述がある。

《東進ハイスクールによると、早稲田と慶應の法学部に合格した人の94.4%が慶應に進んだ。早稲田・政経と慶應・経済でも、61.1%が慶應を選んでいる》

 なぜ、これほどまでに早稲田は不人気となってしまったのだろうか。石嶺氏は90年代に早稲田の“改革”が後手に回ったことが原因だとする。

「慶應は90年、湘南藤沢キャンパス(SFC)に総合政策学部、環境情報学部の2学部を新設し、『最先端の大学』というイメージ作りに成功します。皮肉なことにSFCの人気は落ちているのですが、バブルが崩壊し、長い不景気に悩まされたため、慶應は就職に強いという点で高い人気を維持できました。危機感を抱いた早稲田は、04年に国際教養学部を新設したり、07年に文学部の改変(現在は文化構想学部)などを行ったりしてきましたが、人気の完全復活には至っていません。逆に東京6大学なら明治大学がお茶の水キャンパスの整備、芸能人の入学、地方入試の積極的な実施でイメージを一新し、人気と偏差値を大幅に上昇させました」(同・石嶺氏)

 早稲田政経の“英断”ですら、「慶應の二番煎じ」と揶揄する声もある。そもそも慶應の経済学部は、過半数の生徒が数学必須の入試を突破している。経済学部の募集人員630人のうち、A方式が420人。その入試科目は、英語、数学、小論文だ。対するB方式は、英語、地理歴史、小論文だが、こちらは210人と少数派に抑えられている。

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