メジャーの大先輩・村上雅則氏が語る「大谷翔平」 二刀流には賛成でも投手に専念してほしい

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〈文:柳川悠二(ノンフィクションライター)〉

 全米を驚嘆させる“ショータイム”はいまだ続いている。

 ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平は、開幕から7試合に先発して4勝1敗(防御率3・35)の成績を残し、打っては打率.291、6本塁打、20打点(5月28日現在)を記録。打率こそ3割を切ってしまったが、あのベーブ・ルース以来とされる二刀流挑戦に異義を唱える者は、世界中でも皆無だろう。

 日本人メジャーリーガーのパイオニアである村上雅則氏(元サンフランシスコ・ジャイアンツ)は昨年末と今年2月に、北海道日本ハムファイターズの2軍が本拠地とする千葉県鎌ケ谷市で、渡米直前の大谷と会ったという。大谷にとって村上氏は日ハムの大先輩でもある。

「彼からしたら、『うるせえジジイが来た』という感じでしょうが、本当に素直な良い子で、プロで5年間過ごしていてもおごった様子がまるでない。以前、チャリティイベントにバットを提供してくれて、その御礼にバリー・ボンズの直筆サインボールをプレゼントしたら、あるメディアに『宝物』として紹介してくれていた。あれは嬉しかったですね。最後に会った時、メジャーの公式球を使って練習する彼を見て、成功を確信しました。メジャーのボールは、日本のボールよりやや大きく重たいんですが、彼はまったく苦にする様子がなかった。私のアドバイスなんて、必要ありませんでした。だからこそ、アリゾナで行われていたキャンプやオープン戦での彼の投球を見て、『おや?』と思ったのです」

 捕手が飛び上がっても捕球できないようなボールを投げたかと思えば、打者の2メートル手前でバウンドするような変化球を投げてみたり……。キャンプ地である乾燥地帯のアリゾナの気候にまるで対応できていなかった。

「湿度の高い日本で、包装をはいだらそのまま投げられる日本のボールに慣れきっていたら、誰しも戸惑います。メジャーのボールの場合は首筋の汗を右手でぬぐってみたり、指を舐めたりして指先を湿らせて投げる工夫をしなければならない。そういう練習はやっていなかったのでしょう。いわばファンの期待を裏切った状態でスタートしましたが、開幕直後にはボールを両手でこねたり、指先を湿らせたりして“ボールを作る”ことを覚えていた。それは大事なことなんです」

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