米朝会談でも解決しない! 最前線が考える「日本の核武装」 陸海空「幹部自衛官」緊急座談会

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選択肢は潜水艦発射型

海自 過去の国会答弁では、核兵器の保有も直ちに憲法違反ではないとされています。とはいえ、今から核開発に乗り出すとしても、そう簡単にはいかない。

空自 まずNPT(核拡散防止条約)を脱退することになりますから、必要な核燃料を輸入できるのかどうか。今まで国内に蓄積された分だけで足りるのかも知れませんが、今度は日本が国際社会から「制裁」を受ける可能性すらあります。そうなれば経済面でも外交面でも致命的でしょう。

陸自 核実験を行う場所もありませんからね。東日本大震災以後の原発に関する世論を見る限り、国内に核ミサイルの発射基地を作るというのは、相当に難しい。

海自 仮にミサイル発射基地が完成したところで、先制攻撃で破壊されたら意味がない。しかも国土の狭い日本で、そう何カ所も発射基地を作ることはできない。北朝鮮のような閉鎖的な独裁国家ならいざ知らず、民主主義国で秘密裏に大規模な地下基地を作るのは不可能に近い。結局、潜水艦発射型の核ミサイルくらいしか選択肢はありません。

陸自 イギリスの核戦略がまさにそういう体制ですよね。やはり原子力潜水艦とセットで米国から導入するのが一番の近道でしょうか。買うというよりは借り受ける。自民党の石破さん(茂・元幹事長)が提案したような「ニュークリア・シェアリング(核の共有)」のほうが現実的かも知れません。

空自 あるいは、海自の潜水艦にアメリカ軍人を乗艦させ、日米の合意があった時にのみ発射するというアイデアもあるようですが、いずれにせよ政治的な議論になる。我々はここで自分の意見は述べられませんね。

陸自 非常に高度な政治的議論ですね。というのも、戦略原潜の艦長は、自国の首都が敵からの核攻撃で壊滅した場合、事前に与えられた命令と手続きに従って敵国首都への報復核攻撃を実行することになるからです。それだけ高度な決断を、1人の自衛官に負わせることができるのでしょうか。

空自 裏を返せば、アメリカやロシア、中国の軍人は何十年もそういう権限を与えられてきた。自衛官である以上、法律に基づく命令には当然従うでしょうが、それは例えば発射ボタンを押すことが職業的義務だからに過ぎない。どういう状況になったら発射ボタンを押すのか、報復核攻撃の可否や条件は国会で決めることになる。日本人にそこまでの覚悟があるでしょうか。

海自 現場の人間として言えるのは、いずれの道もそんなに簡単ではないということ。原子力潜水艦を持つと一口に言っても、それを動かす人員の教育には何年も、あるいは10年以上かかります。原子力艦の原理は原発と同じ。核分裂による熱エネルギーで水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回して推進力に換える。つまり熱源以外はかつての蒸気タービン艦と変わらない。自衛隊が原子炉を運用した経験はありませんが、蒸気タービン艦なら運用実績は豊富。それでも、最後の蒸気タービン艦「くらま」が去年退役し、今後はそのノウハウが失われていく。人材の教育には新兵器の開発と同じくらい根気が必要です。

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