北朝鮮が制裁下でもミサイルを作り続けられるワケ 元国連の専門家が語る

韓国・北朝鮮 2018年1月6日掲載

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 洋上での石油密輸、“スリーパー”を使った武器の売り込み……制裁の網をすり抜けようとする北朝鮮のあがきが、世界各地で立て続けに報じられている。だが、それらは氷山の一角にすぎない。北朝鮮が強力な核兵器を開発し、ミサイルの開発技術を急速に向上させられているのは、国際的な包囲網に無数の穴をうがち、あるいは見出しているからだ。国連事務総長から任命され、北朝鮮への制裁違反事件の捜査にあたってきた古川勝久氏が、2017年12月21日に放送されたNHK「ニュースウォッチ9」で詳しく語った。

 2017年12月21日時点までに、国連安保理では9回の制裁が決議された。制裁内容は厳しくなる一方で、毎回「過去最強の制裁」と報じられる(12月23日には10回目の制裁決議が採択された)。しかし、国際社会の批判をよそに、北朝鮮はミサイル開発に突き進んでいる。なぜ、そんなことが可能なのか。

 古川氏は制裁違反を取り締まる捜査のなかで、北朝鮮が制裁下でも活動を続けられる理由を示す様々な証拠に直面してきたという。

 たとえば、ミサイル部品の分析からもそれは窺える。5年前に発射され、その一部が海から回収されたミサイルの部品について、メーカーと製品番号をひとつひとつ確認して製造元をつきとめていったところ、イギリス、スイス、中国、アメリカ製など、少なくとも14種類の海外製品が使われていたことがわかった。古川氏はこう解説する。

「北朝鮮の弾道ミサイルで、現時点で重要なのは、分離技術です。段の継ぎ目に外国製品を多用しているのです」

 それらの外国製品は、決して特殊なものではない。たとえば温度変換器は温度データをデジタル信号に変換するもので、多種多様な工場で幅広く使われている市販品だ。北朝鮮はこうした「ありふれた品」を世界中から買い集め、我々が思いもよらない方法でミサイルを飛ばしているのだ。

 しかし、軍需品はもちろん、民生品であろうと、核・ミサイル開発にかかわる物資の北朝鮮への輸出は厳しく規制されている。それにもかかわらず、北朝鮮はなぜそれらを手に入れることができるのか。

「北朝鮮が直接、物資を輸入するのは難しいですが、迂回拠点を設けるだけで容易に密輸できるようになります。場合によっては、第三国に設けられた複数の拠点を経由して、狙った品目を手に入れるのです。彼らは密輸のプロです」

 制裁は、ヒト・モノ・カネの移動に対して科されるが、世界を見渡せば北朝鮮と国交のある国は100をはるかに超える。ヒトの交流がある以上、モノとカネの流れを遮断することは難しく、それが制裁の網の目をかいくぐって最新技術を手に入れることにもつながっているのだ。

 古川氏は、捜査の全てを記録した著書『北朝鮮 核の資金源―「国連捜査」秘録―』を先日上梓している。そのなかで最強の制裁が「抜け穴」だらけであることを、ひとつひとつ具体的に示している。そこで描かれる捜査の内実はスパイ小説さながらだ。香港で14ものペーパーカンパニーを操り密輸ネットワークを差配する日本人が、永田町や霞が関から目と鼻の先の新橋にオフィスを構えていたという驚愕の事実も明かされている。

「テロ国家」は決して孤立などしていない。そして「抜け穴」だらけの最強制裁が、北朝鮮の暴走に歯止めをかけるどころか、戦争を引き寄せているのが実情なのだ。

 制裁には限界がある。だが、その限界は、制裁の効果を否定するものではない。世界中に空いた大穴のおかげで、北朝鮮は核・ミサイル技術を格段に進歩させ、核弾頭を搭載したICBM(大陸間弾道ミサイル)を完成させるまでに要する時間は少ないと考えられる。仮に北朝鮮がその能力を持ちえたとしても、実践配備のペースを可能な限り抑えていくことには、重要な意味がある。そのためには、日本が率先垂範し、国連加盟国に制裁の実効性を高める働きかけをしていくべきだ。

 古川氏は同書をこう締めくくっている。

「歩みの遅さが問題の本質ではない。歩みを止めてしまうことのほうが、はるかに問題なのだ」

デイリー新潮編集部