“段ボール一杯のピン札”から“錦鯉”まで… 「田中角栄」カネの流儀

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大量のピン札を用意

 ロッキード事件後も角栄の無罪を主張し続けた石井一・元自治相は、こんなエピソードを明かしてくれた。

「オヤジが総理を辞めた後、軽井沢で一緒にゴルフをした時、僕がホールインワンを決めたことがあった。するとオヤジはキャディからレストランの調理場のスタッフまで、皆に1万円ずつ配り出した。全部で200人くらいに渡していたと思う。理由を僕が聞くと、“めったに出ないホールインワンが出たんだから、皆に福を分けてあげないと”なんて言ってたな」

 ちなみに角栄はピン札が好きで、毎朝、秘書に大量に用意させていたという。

「新券の場合、通し番号が揃った状態で手元に置かれるので、枚数を数えなくとも通し番号で金額が把握できる。番号を見ただけで、“50万円”と相手に手渡したりする姿はとても印象的でした」(元秘書)

 新潟日報の小田社長(前出)はこう話す。

「目白の自宅にはピン札の千円札も用意されていて、記者を迎えにきたハイヤーの運転手に角栄さんが“お疲れ様”と渡す。そういう心遣いがあると、千円札でも重みが違ってきます」

 もちろん、政治家としてのし上がるためにも金は湯水のごとく使われ、冒頭で触れた通り、選挙の際には、段ボール箱一杯に詰めた“実弾”を自民党候補者に届けることもあった。

「角栄さんは、全議員の4分の1を田中派に出来れば、スムーズに日本の政治を動かせると考えていました」

 と、小田社長は言う。

「全議員の過半数を占める自民党議員の、そのまた半分という考え方です。数にすると130人ほど。それに加えて野党の議員も何人か抱えていた。彼らを従えるために相当な金が必要だったわけです。角栄さんが総理を辞任する時、佐藤昭さんに“場合によっては総選挙になるから金を用意しておけ”と言ったそうで、その額は100億円だったといいます」

週刊新潮 2018年5月17日号掲載

特集「『金と女』に流儀あり! 生誕100年『田中角栄』」より

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