伊藤まさこさんオススメ! 思わず行きたくなる「美術館+スイーツ」散歩 東京編

ライフ 旅・街歩き

  • ブックマーク

Advertisement

「ポケットにお財布と電話だけポイと入れて、気軽に美術館に立ち寄れたらいいなぁと思っています」そう話すのは、料理や家事など、暮らしまわりにさりげない美しさと心地よさを取り入れたセンスが、絶大な支持を得ているスタイリストの伊藤まさこさんだ。
 取材に執筆にと忙しく過ごす伊藤さんは、仕事や旅の途中でちょっと時間ができると、美術館を訪れるという。そんな伊藤さんが美術館巡りと平行して楽しんでいるのが、鑑賞後にホッとひと息つける喫茶店。ということで今回は、伊藤さんがおすすめする東京の美術館に行ったら立ち寄りたい「おやつ」を中心にご紹介。(以下、『美術館へ行こう ときどきおやつ』参照、引用。)

 ***

岡本太郎記念館(東京都港区)に行ったら「お腹の底から美味しい」お菓子を。

「『爆発空間』という呼び名の通り、いつ訪れても先生の息遣いが色濃く感じられるこの空間。高い吹き抜けのアトリエを覗き込むように見ている時など、奥からご本人が飛び出してくるのでは?と思うほど」

 岡本太郎記念館は、骨董通りから一本奥に入った静かな通りにある、伊藤さんを惹きつけてやまない美術館。近頃《太陽の塔》の内部公開も話題の岡本太郎が、84歳で亡くなるまで暮らした住居とアトリエが、没後に記念館となり今に至る。一風変わった建物の、2階のベランダからそっと顔をのぞかせているのはなんと「コップのフチ子」さんならぬ“ベランダのフチの太陽の塔”! そんなエネルギー溢れる展示を観た後におすすめの「おやつ」は?

「展示も見ました。買いものもしました。最後にほっと一息つきましょう。記念館の敷地内にある『ア・ピース・オブ・ケーク』は、私の長年の知人でもあるお菓子研究家の大川雅子さんのお店です。雅子さんの作るお菓子って、お腹の底から『おいしい』って思えるものばかり(『旨い!』と言った方が正しいかもしれませ ん)。今日いただいたのはキャラメリゼされたりんごが入ったチーズケーキ。記念館の庭の前のテーブルが特等席です」

インターメディアテク(東京都千代田区)の後は「ショコラショ」でほっと一息。

「動物の剥製や骨、植物の標本など、今まで目にしたことがあるものでもここに来るとまるで違うもののように見えてくる」

 5年ほど前、東京駅前に開館したインターメディアテク。東京大学の研究資料や学術標本といったいわゆる「学術文化財」と呼ばれるものが展示されている。また、館全体を舞台にして芝居をしたり、蓄音機を使ってジャズのレコード鑑賞をしたり。昭和 30 年代に撮られた記録映画の上映会が行われることもあるという。どこを切り取っても美しい展示物。昆虫はまるでアンティークのアクセサリーのよう。「ここは東京の新名所なのではないかな」と言う伊藤さん。さて、美術館の後に訪れるのは…。

「展示を観終わった後は、『ジャン=ポール・エヴァン』のショコラショでほっと一息。こちらのお店はJPタワーから2ブロックほど歩いた場所に2015年末オープン。今日いただいたのは牛乳ではなく水で仕立てる『オー ドゥ ショコラ』。 材料がシンプルなだけあってカカオの風味がひと際ひきたちます。マカロンとの相性も最高。マカロンは『カリオカ』を。 場所柄か大人が集う落ちついたショコラバーです」

岩立フォーク テキスタイル ミュージアム(東京都目黒区)の後は「季節ごとの和菓子」を味わう。

「経糸と緯糸によって織り出される布の可能性はそれこそ無限で、知らない世界を垣間みる度に、この先には何が待っているのだろう?と興味が尽きません」

 館長の岩立広子さんが、世界中を旅して集めた布たちを収めるミュージアム。1965年、大学生だった岩立さんは、ニューヨーク、ペルー、メキシコ、グアテマラへ2カ月のひとり旅を決行。わずかな情報と地図を頼りに不安ながらも旅する中で、様々な布、そして布を通じた人との出会いがあったという。「私設のミュージアムは、オーナーの人生が垣間みられるところが楽しさのひとつでもある」と語る伊藤さんが、ここでオススメする「おやつ」は…。

「布を堪能した後は、となりの駅の『御菓子所ちもと』へ行きます。名物『八雲もち』を筆頭に、春は桜餅や黒砂糖を使ったひなあられ、初夏は竹流し水羊羹、秋には栗蒸し羊羹、冬には花びら餅……と季節ごとに食べのがしてはいられない和菓子が並びます。日差しの眩しい本日はのどごしのよい葛きりをいただきます。『無駄なことは一切しない。作り方やレシピも先代から変わっていないんですよ』。店主の石原謙さんがそうおっしゃるちもとのお菓子。まっすぐでやさしい安心のあじわいです」

 ***

 初夏を迎え、お散歩日和の季節。たまにはちょっと足をのばして、「美術館」と「おやつ」一石二鳥の贅沢な楽しみを味わってみてはいかが? 

【動画も公開中!】伊藤まさこ『美術館へ行こう―ときどきおやつ―』(https://youtu.be/lUSy6gtIcus)

デイリー新潮編集部

2018年5月20日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。