「南北融和」ムードに乗っていいのか――冷麺ブームでも日本に向けられた「ミサイル」1100基

国際 韓国・北朝鮮

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 世界卓球で突如として結成された「チームコリア」。南北首脳会談後、融和ムードが高まるなかの珍事と受け入れられたが、そもそもこのムード、易々と乗るべきものなのか。

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 スポーツは政治の領域に踏み込んではならない。逆も然り。常識である。

 だが、スウェーデンで行われた卓球世界選手権団体戦、5月3日の女子準々決勝で、それがあっけなく覆されたのはご承知の通り。

「北朝鮮でも韓国でもなく南北合同チームです」

 会場に流れるアナウンスをすんなり理解できた者は少なかっただろう。まさかの坂はあちこちに転がっているとはいえ、超弩級のまさかだ。いやァ驚きましたよ、とスポーツ紙の記者が振り返る。

「試合直前、韓国と北朝鮮双方が“戦いたくないので統一チームを結成したい”と審判団に提案して受け入れられたんです。大会中、それも5日目です」

 大会では3位決定戦がなかったために、

「戦わずして銅メダル以上が確定した両国の選手はコートに姿を見せて、卓球台の前で肩を組んだりスマホで写真を撮ったりしていました。大変だったのはその3時間後にウクライナとの準々決勝を控えていた日本選手団で、当然ながら強豪2チームの合流に戸惑っていました。まあ、なんとかウクライナ戦、そして翌日の“コリア”との準決勝も制することができてよかったです。決勝では中国に力負けしましたけれど」

 国際卓球連盟の細かい規定など引くまでもなく、ルール度外視の振る舞いである。こんな事態が出来したのは、4月27日の南北首脳会談が引き金であり、政治の関与は言わずもがな。

「ですが、国際社会はこうしたことに目を瞑らなければいけないのかという疑念が嫌でも湧きます」

 北朝鮮の政治に詳しい國學院大栃木短大の宮塚寿美子講師はこう語る。

「国際オリンピック委員会のバッハ会長が“この流れが続いて、朝鮮半島や世界が平和になる結論を南北の首脳が出すことを願う”と理解を示しました。つまり特別なことが許されてしまったのです。こうした前例ができたので、ほかのスポーツでも同じことが起こりうると思います」

 その憂いが現実となるかはともかくとしても、

「今回の一件は、和平ムードや南北の共同行動を国際社会にアピールするためのもの。政治や経済面でいきなり友好関係を示すのは難しいですから、急遽、大会のルールを無視してシンボリックなものを作ったのでしょう」

 と、静岡県立大学の伊豆見元(いずみはじめ)名誉教授は見ている。結果、南北の融和ムードが醸成されたのは事実なので、首脳会談の一定の成果ともいえるのだろう。

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