「南北首脳会談」を異色の在日脱北者が読み解く ウルトラCは“米軍の北朝鮮駐留”?

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文在寅が金正恩に譲歩した理由

 金柱聖氏は、韓国で統一教育院の講師も務めている。韓国の学生に対して、南北統一の重要性を説くという役割だ。ところが、朴槿恵(66)から文在寅に政権交代が行われると、教育内容も変化しつつあるという。

「朴槿恵政権の時は、87年の大韓航空機爆破事件や10年の延坪島砲撃事件など、北朝鮮の問題点もしっかり学生に教えるというスタンスだったと理解しています。『統一は民族の悲願だが、反共・滅共は不可欠』という姿勢です。ところが文在寅政権に代わってから『教育現場で“統一”という言葉は今後、使わない』との指示がありました。『南が北を統一する』という印象が強く、『南北融和の精神に乏しい』というのが理由のようです。とはいえ、それ以外のことは決まっていません。平昌オリンピックから南北首脳会談まで、北朝鮮との外交に多額の予算が割かれ、統一教育には資金が回ってこないからです」

 金柱聖氏は、保守と革新、両方の教育が必要だと考えている。だが少なくとも現在は「韓国国内の“空気”は革新側に偏ってしまっている」という。例えば南北首脳会談後、ニュース番組であっても北朝鮮に批判的な言説は御法度だそうだ。

「北朝鮮の核ミサイルがアメリカに向けられているのは事実でしょう。韓国国民にとって、北の核開発問題を『自分たちに関係のない話』と受け止める傾向は否定できないと思います。韓国国民にとって切実な問題は、南北離散家族の再会、開城工業団地と金剛山観光の再開です。この3つを文在寅政権が実現すれば、有権者の支持は盤石となるはずです。これこそが今回の首脳会談で、文政権が北朝鮮に相当な譲歩を見せた理由だと推測しています。文政権にとって大切なことは、革新政権が今後15年は続き、文在寅大統領が引退しても刑務所に送られない政治体制の構築ではないでしょうか。そのために、南北首脳会談という派手なイベントが必要だったのかもしれません」

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