中学受験、「9歳の壁」を越えられるか――絶対に失敗しない「塾選び」と「親の関わり方」

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性格と塾の選択

 いまの学校教育は、徒競走で順位をつけないように個人差を曖昧にし、子供が傷つくのを避ける。そんな環境で育った子がSAPIXで下位にランクされれば、傷つくだろう。塾ではできない子は冷遇され、上位クラスの子に気圧される。それは大人になるための訓練でもあるが、親がフォローする必要がある。

 一方、負けん気が強い子なら下位クラスでも頑張ることがある。私の知人の息子も、SAPIXの下位から中学は学習院に進み、高校で早稲田大学の系属校に入った。ラグビーもやっていたから、受験勉強をスポーツと同じように捉えていたのかもしれない。

 子供の性格は、進学先を決める際にも考慮すべきだ。負けん気が強い子は、開成中にビリで入っても頑張り続けるだろう。しかし、そうでなければ無理して開成に進むより、偏差値が少し低い海城中に入学して、学年50位以内をキープしたほうが、東大に合格できる確率は高くなると思う。

 また、子供がSAPIXの上位クラスにいることで安心し、受験校の入試問題も分析しない親が多い。だが、通っている塾の授業が、志望校の入試問題と合っているかどうかは重要だ。塾内順位と模試の結果が乖離しているとか、志望校の過去問を解かせて苦手な分野があったという場合は、弱点の補強に面倒見のいい塾に通わせることなども、時に必要だ。私の娘もSAPIXと並行して、早稲田アカデミーの志望校対策講座にも複数回通った。

 なお、周りの子が塾に通っているから、と慌てて通わせる人も多いが、その場合、基礎学力が追いついていないことが多い。たとえば計算が遅ければ、それは入塾前に克服すべきで、なにができていないかという分析から始めなければ、勉強はできるようにならない。できないのは頭が悪いからではなく、基礎学力が身についていない、9歳の壁を越えられていない、ということがほとんどなのだ。

 そういう場合、個別指導塾も有効だ。ただし、講師のレベルがピンキリなので、トライのように、講師のレベルによって授業料が異なるところに通うのでなければ、子供と先生の相性が悪かったらすぐにチェンジする、というつもりでいたほうがいい。数多く試して、よい先生をつかむのだ。

(2)へつづく

和田秀樹(わだ・ひでき) 精神科医。1960年大阪生まれ。私立灘中高を経て東京大学医学部卒。精神科医として「和田秀樹こころと体のクリニック」院長を務める傍ら、受験アドバイザーや教育評論家としても精力的に活動。通信教育「緑鐵受験指導ゼミナール」も主宰。『新・受験勉強入門』『受験学力』など著書多数。

週刊新潮 2018年2月15日号掲載

特別読物「子供を東大に入れた家庭に学ぶ 絶対に失敗しない『塾選び』と『親の関わり方』」――和田秀樹(精神科医)より

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