妹が大ケガしたから? 再来年の出所をフイにした「平尾脱獄囚」

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「しっかり者」

 事件が注目を集めたのは、大井造船作業場が「塀のない刑務所」として知られた存在だからでもある。

 同所をかつて取材した、ノンフィクション作家の斎藤充功氏によれば、

「受刑者は、作業場で造船所の社員と一緒に作業を行います。社員とはヘルメットの色で区別している。また、住まいは近くの寮ですが、部屋には鍵がかかっていませんし、窓には鉄格子もない。周囲も背丈ほどのフェンスで囲まれているだけです。受刑者は“逃げようとすればいつでも逃げられますよ”と言っていました。そんな施設ですから、入れるのは、初犯で模範囚、身元引受人がいるなどのしっかり者だけです」

 その「しっかり者」認定された平尾は、福岡県生まれ。実家は同県の宮若市にある。

 周辺の住民は言う。

「龍磨は3人きょうだいの次男で下に妹がいます。代々市営住宅に住み、お父さんはトヨタの工場関係の仕事をしていますが、夫婦仲が悪く、彼が小学生の時に母親は妹を連れて出て行ってしまい、後に離婚。以後は父親に男手ひとつで育てられましたが、近所では“ワル”として知られた存在でした」

 22歳の時、「生活費や遊ぶ金が欲しかった」と、高校の同級生と共に、理容店の店舗や車上を荒らすなど実に121件の窃盗を繰り返し、400万円相当を懐に。これで2013年に逮捕され、5年6カ月を塀の中で過ごすことになった。出所予定は再来年の1月だった。

「平尾がなぜ脱走したのかについてははっきりとはしませんが……」

 と、先の記者が言う。

「彼は最近、生活態度が悪いなどと刑務官に強く叱責されて落ち込んでいた。また、ここの寮は上下関係がメチャクチャに厳しいところで、受刑者同士でトラブルになった可能性もある。さらには、妹が最近大ケガをしたから、という説もあります」

 いずれにせよ、もし捕まれば、脱走と窃盗などの罪が付いて最長10年ほどは塀の中に入れられる可能性も。あと2年頑張れば、大手を振って娑婆に出られたにもかかわらず……。随分と間尺に合わないことをしたものである。

週刊新潮 2018年4月26日号掲載

特集「サヤエンドウとはっさく…… 心が折れない『脱獄囚』のサバイバル」より

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