“脱獄囚”発生の「松山刑務所大井造船作業場」 実は「恐怖の刑務所」

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「塀の中に帰りたい」という脱走者も

 96年には「塀の中に帰りたい」と脱走事件が発生した。日刊スポーツの「愛媛・松山刑務所 服役囚が脱走 約1時間20分後に逮捕 設立以来15件目」(96年2月21日付)を見てみよう。

・容疑者は「トイレに行く」と言い残し看守の隙を見て逃走
・作業所から5キロ離れた公園で発見され逮捕された
・取り調べに対し「作業場内の人間関係や生活になじめず、塀のある松山刑務所に帰りたかった」と答えている

 容疑者の供述は、同日付の毎日新聞の記事(「塀の中に帰りたくて」 塀のない造船所の刑務所脱走 逃走容疑で逮捕--愛媛県)のほうが興味深い。

・「作業の指導は普通、刑務所では刑務官がするが、ここでは先輩の受刑者がし、その指導が気にくわなかった。塀のある松山刑務所に帰りたかった」

 日刊スポーツの記事に戻れば、容疑者の発見された公園は松山刑務所に向かう道路沿いにあったという。「塀の中に帰りたい」という想いから、徒歩で向かっていたらしい。それだけ大井造船作業場での生活は厳しいということだ。

 ドックの関係者が明かす。

「再犯率が低いと言いますが、やはり模範囚を選抜していることも大きいでしょう。前科何犯というような受刑囚を連れてくると、違った結果になるはずです。若くて健康で、刑期も短い受刑者が大半なので、とにかく我慢して脱走もせず勤め上げるのが最も合理的な行動だと分かっているわけですよ。脱走なんてしたら損をするだけなのに、そういうことが起こるのは、やはり作業所内でいじめが常態化しているからだと聞いています」

 脱走事件が起きてから、容疑者の逃走圏内の至るところに検問所が設置され、車の大渋滞が巻き起こっているそうだ。ただ身を隠せそうな場所は意外に少なくなく、この関係者は「逃亡が長期化しても驚きませんね」と呟く。

 共同通信などの報道によると、今回、脱走した平尾受刑囚は、逃走に使う車を盗んだ際、周囲に「車をお借りします」とのメモを残しておいたという。それだけの“常識”を持つ男が、どうして理屈に合わないことをしたのか。

 警備の見直しは言及されているが、ひょっとすると作業所における人間関係なども調査したほうがいいのかもしれない。

週刊新潮WEB取材班

2018年4月11日掲載

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