武術家が指南する長生き健康法――心と体が若返る「股関節ストレッチ」

ドクター新潮 健康 運動

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骨盤のズレが自律神経にも

 武術で使う骨盤や股関節は、だれにとっても重要です。よく相撲で「腰のキレが悪い」という言い方をします。人間の腰は回すもので、それを「切る」のは難しいですが、40年前、私は日本で初めて、「腰を切る」とは「股関節を切る」ことだと説明しました。

 当時、野球でもゴルフでも股関節を切るスイング理論は日本に存在せず、「腰を回す」「腰を切る」などと説明されていました。しかし腰を回そうとすると、上半身も回ってしまって力が生まれません。そこで私は股関節の独立したあり方に着目し、股関節を切ることで、骨盤が独自に動くという考えに至りました。

 人の股関節、骨盤は、歩きはじめたときから歪んでいきます。記者さんも左足が右足より長い。左の股関節が開いて骨盤が突き上げられているからです。私の経験上、95%以上の人は左足のほうが長い。記者さんも同様で、左腕とウエストの間に隙間がある一方、右腕は腰に付いている(1)。左の骨盤が突き上がった結果、右に「く」の字に寄ってしまったのです。

 こうして骨盤が歪むと、日常的に便秘や下痢などの症状が出るほか、精神的にアンバランスにもなります。なんとなく体調が悪く、集中力がないというとき、鏡の前で骨盤をチェックすると、大抵どちらかの骨盤が上がっています。骨盤が前後に傾いていることもあります。そんなとき5〜10分、股関節のストレッチを行うと、憑き物が落ちたように楽になります。

 特に女性は、妊娠や出産時に骨盤が著しく歪みます。出産後に不安やイライラを感じ、うつを発症する人もいますが、骨盤のズレが原因で自律神経のバランスが崩れていると知れば、救われる人も多いことでしょう。

 サプリメントを摂取しても骨盤の歪みは治りませんが、足の長さを整え、骨盤の位置を正常に戻すストレッチを行えば、自律神経は自然と整っていきます。

 信号待ちをしている人の後ろ姿を見ると、ほとんどの人は骨盤がズレています。これは素人にも判断可能で、鏡の前に立ち、左右どちらの腕のほうが体に近づくかをチェックすれば、体の中心がどちらに寄っているかがわかります。記者さんは体が右に「く」の字に歪んでいると指摘しました。仰向けに寝て、どちらの足が長いかを、だれかに見てもらっても効果的です。

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