63億円を騙し取られた積水ハウス 増加する不動産詐欺、「地面師」たちの手口とは

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地価高騰で「地面師」たちの饗宴(上)

 梶山季之の小説『のるかそるか』は昭和30年代、空前のオリンピック景気を見越して大博打をうつ地面師の物語である。時代は変わり、2020年には再び東京オリンピックがやってくる。高騰する不動産をネタに巨額のあぶく銭を手にする現代の地面師の饗宴。

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 午前零時を回ろうかというのに、カラオケの音楽とホステスの嬌声が店内に響きわたる。ここは、東京のある下町のフィリピンクラブ。その一角のボックス席で数人のホステスをはべらせている男がいた。テーブルの上には、乱雑に並ぶスパークリングワインの瓶。暗い店内だというのに男はキャップにサングラスという出で立ちだ。

「あのお客さん? 毎日くるよ。いつもお金いっぱい使ってくれる。おかげで彼が指名する娘はうちの店のナンバーワンよ。店が始まる前には、よく同伴で銀座に連れて行ってもらってヴィトンとかアルマーニのバッグとか買ってもらうんだって」

 ホステスの1人が羨ましそうに話す。午前3時すぎ、クラブが閉店になる。数十万円はあるだろうか、男はポケットから無造作に札束を取り出して店長にぽんと渡す。

 店から出てきたところで声をかけた。

――積水ハウスの詐欺事件のことで聞きたいことがあるんですが。

「なんでこんな場所に来るんだよ!」

 突然の質問にキレる男、名前を仮に「山田耕太郎」としておこう。

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