「出会い系」で性生活を愉しんでいるアメリカの高齢者

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 このところ、週刊誌の見出しでよく目にするテーマが「老人と性」。何歳まで“現役”であるべきか、“現役”であるためには何をすべきか、いやとっととリタイアしたほうがいい等々、話題は尽きないようである。

 こうしたテーマは、日本では比較的最近までタブー視されていたが、アメリカでは以前から議論されていたようだ。アメリカでの取材歴が長いフリーライターの矢部武氏が、最新刊『60歳からの生き方再設計』で、その実情をレポートしている。

 同書によると、アメリカではインターネットを使ったオンラインデートサービス(以下、ODS)が、高齢者のお相手探しに大きな役割を果たしているという。日本では「出会い系サイト」とも呼ばれて、あまりいいイメージがないのだが、アメリカでは若者からシニアまであらゆる年齢層を対象にしたODSが盛んなのだ。

 それでは、実際にどのような「出会い」があるのか。以下は矢部氏が取材した実例である(以下、『60歳からの生き方再設計』より引用)。

■サイトで出会ったパートナー

 ODSのおかげで新しいパートナーに出会えたという高齢者に何人か取材することができた。

 数十年前に夫と離婚し、気ままな一人暮らしを続けるナンシーさん(仮名、75歳)は、今でも恋愛とセックスには積極的だ。彼女は約5年前にODSに登録し、最初プロフィールに実年齢よりも10歳ほど若く記入した。男性は自分より若い女性を求める傾向があるので、実年齢を書くとプロフィールをみてもらえないのではないかと思ったからだ。そして、相手からメールなどの連絡がきたら本当の年齢を言おうと考えた。つまり、高齢女性に対する偏見を逆手に取ろうとしたわけだが、それはうまくいかなかった。実年齢を告げたとたんに相手が怒り出したり、逃げ出してしまったりしたからだ。

 そこで彼女は他のODSに登録し直し、今度は実年齢を記入した。すると、自分とほぼ同年齢で弁護士をしていたという男性から会ってほしいとのメールがあり、何度が会っているうちに彼を好きになった。貧しい家庭に生まれて虐待を受けながらもその苦労をバネにして弁護士となり、昔の彼自身のように弱い立場にある人の救済活動を続けてきた生き方に惚れたのだという。性格がやさしく、笑顔もすてきだった。

 ただ、セックスに関しては、彼は時々勃起が不十分で挿入できないこともあった。70歳を過ぎた男性に勃起不全は珍しいことではないが、彼はそれをすごく気にした。そこでナンシーさんは「問題ないから、心配しないで」と言い、エモーショナルセックス(挿入なしのセックス)を楽しんだ。

 しかし、2人の幸せな日々は長く続かず、出会ってから3年ほどして彼は突然病気で亡くなってしまった。

 彼女はひどく落ち込んだ。しばらく新しい人と付き合う気になれなかったが、最近ようやく元気を取り戻し、ODSでお相手を探し始めた。実は、私が取材した日(2013年7月)の前日も、新しいお相手候補者とランチデートをしたという。

 彼と会うのは初めてだったのでディナーではなくランチにしたが、お互いに話が盛り上がり、「また会ってみたい」と嬉しそうに話した。

■60歳を過ぎてはじめてセックスを楽しんだ

 エミリーさん(仮名、60代後半)は20代で結婚し、30代で離婚した。その後はシングルマザーとして3人の子育てに追われ、パートナー探しどころではなかった。でも、50代半ばを過ぎ、子供たちは成長して家を出てやっと自分の時間がもてるようになった。

 彼女は趣味の音楽や読書などを楽しんだが、それだけでは物足りなかった。やはり、「互いに愛し合い支え合いながら、残りの人生を楽しく過ごせるパートナーが欲しい」と心から思った。

 そしてある日、新聞に掲載された個人広告を見ていて、気になる男性を見つけた。アメリカではもともと、新聞・雑誌などにパートナー探しを目的とした個人広告を載せるのがさかんだが、このような土壌があったからこそODSが急速に広まったということもできる。いずれにしてもアメリカには高齢者を含め男女の出会いのチャンスが多く存在することはたしかだ。

 エミリーさんが新聞で見つけた男性は運動や読書が好きな元大学講師で、年齢も近かった。教育関係の仕事をしてきた彼女と共通点があり、趣味なども合いそうだった。

 彼女は男性に電話し、デートの約束をした。20代後半の長男も母親が久しぶりにデートするというので喜んだ。しかし、期待していたデートはすぐに落胆に変わった。レストランで食事をしている間、男性は別れた奥さんの悪口を延々と言い続けたので、嫌になってしまったのだ。二度と会うことはなかった。

 彼女はそれからしばらく個人広告を通してパートナー探しを続けた。数人の男性とデートしたが、うまくいかなかった。個人広告には写真が載っていないものが多く、会ってみたらすごい肥満でがっかりしたという男性もいた。

 60歳を過ぎて、エミリーさんはお相手探しの状況がますます難しくなるのを実感した。この頃からあきらめに近い気持ちも生まれ、「無理にパートナーを見つける必要はない。ずっと一人でいてもいいじゃない」と考えたりした。友人に話すと、「あきらめるのはまだ早いわよ」と、ODSに登録するように勧められた。あまり気は進まなかったが、最後の手段としてダメもとで試してみることにした。

 彼女はODSに登録したが、会ってみたい男性はなかなか現れなかった。登録している高齢男性の多くは自分より10歳から15歳くらい若い女性を求めていたのに対し、彼女は同年代の男性を求めていたことも影響していたようだ。

 半年くらいしてようやく同年代の男性から「会いたい」というメールがきた。彼のプロフィールを見ると、生き方や考え方がかなり近く、趣味の音楽、読書、ハイキングなど共通点も多かった。

 エミリーさんは会うことにした。不思議だったのは最初のデートでずっと前から知り合いだったような親近感を感じたことだ。彼の方も同じように好意をもってくれているのがわかった。

 2人は3度目のデートで週末に泊りがけの旅行をし、初めてベッドを共にした。男性と関係をもつのが本当に久しぶりだった彼女は、少し緊張したという。

 それから週末は彼と一緒に過ごすようになった。彼とは同年代なので、昔流行っていた歌や時代の風潮、政治的関心事などについて楽しく語り合うことができた。そしてベッドのなかで冗談を言ったりしながら、セックスを思いっきり楽しんだ。元夫を含め過去に関係を持った男性とはそういうことはほとんどなかったという。彼女は人生最高のパートナーに出会えた幸運を何度も何度も感謝した。

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 ODSには無料のものもあるが、通常は毎月20~60ドルくらいの料金がかかる。紹介した2人は幸福な出会いを実現できたが、もちろんアンハッピーエンドもある。中にはプロのライターにプロフィールを作成してもらっている会員もいて、そういう人は実物よりかなり魅力的に書かれている可能性があるという。

デイリー新潮編集部