生誕65年「テレサ・テン」の遺品が台湾で“ゴミ扱い”されている

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台湾でも中国人観光客の爆買い

 42歳 の若さでタイで客死した95年、母国・台湾で営まれた葬儀には、台湾だけでなく世界各国から3万人を超えるファンが駆けつけた。遺体は、生前の姿が50年は保たれるというエンバーミングが施され、棺は中華民国の国旗と国民党の党旗で覆われる公葬(国葬に準ずる)の扱いだった。

 当然、その直後には台湾にテレサ・テン記念館が出来てよさそうなものだが、常設の記念館が設立されたのは2009年 という。

「2008年5月に台湾政府は独立派の民進党政権から、親中色の強い国民党の馬英九政権 に移ります。その2カ月後には中国は台湾への団体旅行を解禁 したんです。すると中国からの観光客が台湾に押し寄せるようになったんです。そこで09年に高雄に試験的に作られたのが『テレサ・テン記念館(鄧麗君紀念文物館)』でした。1日に20団体、600人 もの観光客が訪れる盛況ぶりだったのですが……」

 この年の夏、高雄を中心とする台湾南部は台風8号により多大な被害を受けた。そこで民進党の重鎮でもある高雄市長が、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世に被災地への慰問を要請。快く引き受けたダライ・ラマだったが、これに中国が猛反発する。

「高雄市のホテルは9月に入って、中国人観光客から3000室分ものキャンセルが相次ぎました。中国からの独立を掲げるチベットの中心こそ、ダライ・ラマです。中国政府が人民に高雄へは行くなと命じたのでしょう。昨年(2017年)は韓国に米軍のミサイルが設置されたことで中国は“禁韓令”を出しましたよね。中国にとって海外に行っては爆買いする人民は武器でもあり、相手国が何か起こせば旅行会社に圧力をかけて出国の規制をかけますからね。この時は、駐日中国大使から台湾担当となった王毅が、10年1月に高雄市の代表団と会見して解禁を解いた。そこでようやく10年4月に本格オープンしたのが『テレサ・テン記念館』です。台湾人にも彼女のファンはいますが、実は多くは『嫌いでもなければ好きでもない』という人が多い。政府寄り、特に国民党の広告塔というイメージもあるのかもしれません。結局、記念館を支えていたのは実は、中国人観光客だったんです」

 高雄市の愛河という川沿いの240坪もの倉庫を改装して作られた記念館には、彼女が使用したステージ衣装や愛車のベンツ、生活に使った食器など様々なものが展示 され中国はむろん、日本からもファンが押しかけていたという。しかし、彼女の人生同様、遺品もまた、台湾の中国の狭間で翻弄されることに――。

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