近藤誠の“「風疹」「B型肝炎」「HPV」ワクチン否定”を信じるな

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信頼性の乏しい論文データ

 そしてB型肝炎について。

〈将来の性行為によって感染するB型肝炎を、乳児期のワクチン接種で予防しようとするアイデア自体に無理があります。またワクチン導入前の、子どもの陽性率も低く、そもそも導入の必要性がなかったのだと思います〉

 02年のWHOの報告では、B型肝炎ウイルス(HBV)感染者は世界中で20億人、持続感染者は3・5億人、年間70万人近くがB型肝炎関連疾患で死亡しています。私も、これまでにHBV由来の肝がん、肝硬変の患者さんの死を数多く見届けてきました。また、B型肝炎が劇症化した方の生体肝移植に携わった経験もあります。このウイルスは、これまでの認識に反して、血液だけではなく、最近では唾液や涙からも検出されることが知られ、決して性交渉だけに注意を払えばよいわけではありません。食器やタオルを共有する家族間での感染や、フットボールや相撲などのコンタクト競技による水平感染も報告されています。

 02年には、佐賀県の保育所関係者が感染源となって、園児19名、職員6名の集団感染が報告されました。集団生活で容易に感染するこのウイルスはひとたび慢性化すると、排除は難しく生涯付き合っていかなければなりません。とりわけ免疫が未熟な1歳未満の乳児期に感染すると90%以上がキャリア化するようです。そこで、16年10月から、ようやく日本でもB型肝炎ワクチンが定期接種化され、全出生児を対象に、生後12カ月までに3回接種することが決定しました。このワクチンは青年期より乳幼児期に接種するほうが、より効果が高いことも示されています。毎年、世界中で何億人もの人たちがB型肝炎ワクチンを問題なく使用しているわけで、もっとも安全性の高いワクチンの一つであるにもかかわらず、

〈副作用も甚大です。脳の自己免疫疾患がよく生じることも問題です〉

 とする根拠は不明です。

〈英国の研究でも、米国の研究でも、B型肝炎ワクチン接種によって多発性硬化症の発症率が高まっています〉

 近藤氏がどこからともなく調達してくる論文データは、客観的に信頼性が乏しく、何の因果関係も証明されていないのです。そのような言説に騙されないようにと、米国CDCは、いくつもの信頼できる科学論文を引用しながら、ワクチンと多発性硬化症との因果関係を丁寧に否定しています。

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