石原さとみ主演「アンナチュラル」から読み解く“女性像”と“生きる力”の鍵とは

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野木亜紀子が打ち出す新しい“女性像”

「アンナチュラル」における女性像。これは大きな鍵である。主人公、三澄ミコトがちょっとオシャレな服(恋人の家族との顔合わせのためだ)を着ているとラボの男性メンバーが次々ツッコミを入れる。日々オフィスで「オフィスカジュアル」の装いの程度に頭を悩ませている女性たち。どれくらいのオシャレなら「仕事にふさわしい」と認められるか、女性は無意識に探りながら生きている。そんな中、ミコトは「あたしの服どうでもいいから!」と一喝し、事件究明にまっしぐらだ。ひそかに多くの女性を勇気づけた一言ではないか。「あたしの服どうでもいいから! 仕事ちゃんとしてれば事情は何でもいいじゃん!」と。

 なお、ミコトの年齢設定は33歳となっている。中堅の医師として、また結婚に悩む年齢として非常にリアリティがある。ちなみに「逃げ恥」で石田ゆり子が演じた「百合ちゃん」のドラマ版での年齢設定は、49歳であった。原作の漫画では52歳の設定なのだが、石田の実年齢にあわせ、また視聴者からの共感を集める配慮で多少若く設定されたと考えられる。石原さとみの実年齢は31歳であることを考えると、絶妙にズラされたこの設定には、脚本家・野木の明確な意図を見て取ることができる。

 ミコトには関谷聡史(福士誠治)という3年付き合った彼氏がいたが、ミコトに急な仕事が入ったことにより、両親との顔合わせに遅れたことで破局してしまった。別れ際、聡史の残した「今日くらいはこっちを優先してほしかった。俺はミコトと家族になりたいと思ってた」「こんなんで俺たち家族になれるの?」という言葉は、深く私の胸に刺さった。家族になるためには、常にすべてをさらけ出し、理解し、何を置いても優先しなければいけないのか? それだけが家族なのか? 何とも後味の悪い、しかし重要な問いを残した別れだった。

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