AV出身「元日経記者」が明かす職場不倫経験 必要なのは“理性的な割り切り”

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うっかり間違えれば…

 恋愛関係にももちろん利害やコスト・ベネフィットの概念はつきものだ。こと、職場不倫に関しては、プライベートの恋愛関係が仕事に直接的に関係する。そしてそれは、うっかり間違えればうまく利用されたり、職場で不自然に人を無視したりしなければいけない結果を導き、運が悪ければ恋愛と仕事両方が危機的状況に置かれる可能性もある。

 この「片方が(恋愛感情ではない目的のため)完全に理性を保っている」不倫関係というのは、もう一方の側にも、ある程度の理性的な割り切りがないと破綻する。

 ホステスと客、ジゴロとマダム、愛人とパパの関係において、片方が純愛の如く燃え上がっても、もう片方にとっては業務に近いものだ。それを理解していないと傷ついたり勘違いだと揶揄されたり、最終的にはむごたらしく捨てられたりする。

 職場不倫において、ホステスや愛人のようにはっきりした金銭的な目的ではなくとも、出世や採用を目的として身体を明け渡す場合のメンタリティはジゴロや愛人に限りなく近い。

 先に指摘したとおり、これは条件を満たせば、継続可能でトラブルの少ない関係でもあるのだ。事務的でつまらない反面、事務的であることを受け入れ、自分の感情さえコントロールすれば、メリットを与え続けている限りは関係が続く。逆に関係を断ち切るのも、容易である。お金を振り込むのをやめれば、関係を暴露されるリスクはあるものの、パパ活愛人は頼まれなくとも連絡してくるのをやめるだろう。

 ここまで書いてきてなんだが、別に上手な不倫の仕方を伝授したいわけでもなければ、不倫カップルを擁護したいわけでもない。ただ、性的なことが比較的家庭や地域の関係の中から排除されている日本社会であればなおさら、性を短期間、外に持ち出して満足を得る、という不倫の極意自体はそれほど不自然だとは思わないのだ。

 宗教人類学者の植島啓司氏は『官能教育 私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか』(幻冬舎新書、2013)で、「だいたい一人の相手と結婚によって一生結びつくのはいいが、他の相手への恋愛感情まで押し殺さなければならないというのは人間の本性にぴったり合った制度だとは思えない」と述べる。夜の街で、あるいはシティホテルのロビーで、恋心を抱えて挙動不審にうごめくオジサマ方を見ると、深く納得せざるを得ない。

 要は、不貞行為をするならするで、それは一応許されない行為だということをもう一度頭に叩き込み、全てを手に入れようとしないことだ。自分の思う通りにしたい、何も諦めたくない、という態度でいると当然それ相応の報いがあるし、そうなったところで誰の同情も期待できない。

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鈴木涼美(すずき・すずみ)
文筆家。1983年東京都生まれ。20歳でAVデビューし、80本近くの作品に出演する。2009年、大学院修了後、日本経済新聞社に入社。14年に退職、エッセイやコラムを多数執筆。著書に『オンナの値段』(講談社)など。

週刊新潮

特別読物「『今井絵理子』タイプはトラブル多発! 『AV出身』『元日経記者』が警告した『職場不倫は誰もが巻き込まれる』――鈴木涼美(文筆家)」より

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