NYタイムズが1面で報道 欧米メディアは山口敬之の「準強姦事件」をどう伝えたか

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フィガロ、ダーゲンス・ニュヘテルは…

 その他、イギリスの公共放送BBCやフランス国内で最も古い歴史を持つ日刊紙フィガロ、スウェーデン最大部数の日刊紙「ダーゲンス・ニュヘテル」など、少なくない欧米メディアが詩織さんのこの事件を報じている。

 例えばフィガロは、【伊藤詩織、日本を震撼させる、レイプ事件】というタイトル、そして〈政権に近い人物に襲われたある女性ジャーナリストが、襲われた事実を認めさせ、社会のタブーを告発する戦いに挑んでいる〉というリード文のあと、次のように続く。

〈彼女の話によれば、著名な極右ジャーナリスト山口敬之とレストランで仕事上の会食中にいきなり意識を失い、数時間後に意識を取り戻したときにはちょうどレイプされている最中だった。話は詳細にわたり(「思い出に君のパンティーをもらっていいかい」と山口が彼女に聞いたという)、内容には信憑性がある〉

 詩織さんは服を探してホテルの部屋を歩き回ったが、なかなか見つからない。その間に発せられたのが、他ならぬ“極右ジャーナリスト”の「パンティー」発言である。そして記事はこう継ぐ。

〈山口敬之は彼女宛の弁解書簡の形で極右の雑誌(月刊「Hanada」)に記事を載せることになる〉

 NYタイムズ同様、日本の“後進”ぶりを論(あげつら)い、

〈かつて東京で起きた、フランス人女性のレイプ事件。これを扱った元駐日フランス大使館職員はこう述べる。「日本の警察のレイプ案件に関する対応は30年前のフランス警察並みである」〉

〈伊藤詩織は女性の社会的地位が男性より低く、女性が告訴しにくい社会そのものを相手にしている。彼女はネックのボタンをはずしたシャツというカジュアルな服装で記者会見場に現れたが、この点もツイッターで非難された。「近しい者の中には私から離れて行った人もいた」と彼女は言う。マスコミは「ハニートラップ」(無実の男性をハラスメントで訴える女性)という噂も流した。日本女性自身もまた社会における女性の地位について概して保守的な考えを持っている。伊藤詩織と同世代の女性たちのほとんどは「夜遅く男性と1対1で食事するのは女性自身に落ち度がある」とインタビューに答えている〉

 詩織さんの“服装”については、【日本の#metooの第一人者、勇気のある女性】と題された「ダーゲンス・ニュヘテル」記事でも、

〈「同じ記者仲間から、記者会見前に、ジャケットを着るように、とアドバイスをされたが、私はそれをしなかった。犠牲者としての態度や行動の指示を受けるのがもううんざりとなっていた」と詩織がいう〉

 と触れられている。また、以下のように記者が紹介するのは、会見に寄せられた“反響”だ。

〈記者会見の後、Eメールの受信フォルダが殺害の脅迫メールで一杯となった〉

〈他の女性から、自分の事を自分で守れなかった、ということで批判もされた。保守派である安倍総理を降ろすための政治的な意図があったのではないか、という噂もあった。なぜなら、普通の日本の女性なら、あれだけ恥ずかしいことについてオープンに話をするはずはないからだ〉

 つづく(下)では、こうした欧米メディアの反応について詩織さんが胸中を明かす。

週刊新潮 2018年1月18日号掲載

特集「ついに『NYタイムズ』が1面で報道! 欧米メディアは『総理ベッタリ記者』の『準強姦事件』をどう伝えたか」より

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