知られざるキーワードは“無尽”!? 最強の健康長寿「山梨県」のDNA

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

一度は廃れた長寿村「棡原」

 ところで、半世紀ほど前、日本一の長寿村と呼ばれた棡原(ゆずりはら)をご存じか。現在、上野原市に属し、同地の梅鶯荘の女将がいうには、

「コメはとれないので小麦と大麦が主食で、肉は一切なく、たけのこやふきのとうなど山菜とお野菜が中心の食事。自給自足でとれたものを食べていました」

 人生50年といわれたころ、80歳や90歳がゴロゴロいたので騒ぎになった。

「ここの特徴は斜面。切り株がないと籠も置けない斜面で高齢者が農作業をしてきました」(同)

 粗食と、斜面で仕事をする緊張感が長寿の秘訣とされたが、交通の便がよくなると食文化が変わり、核家族化も進んで、長寿は潰えたといわれた。

 ところが訪れれば、やはり長寿村であった。94歳の妻と暮らす95歳の男性は、

「91歳までバイクで、野菜を直売所に卸しに行ってたけど、その畑も去年9月でやめた。血圧が高くて薬を飲んでるけど、足の筋肉はしっかりしている。農作業をやってたからかな」

 新聞は欠かさず読むという。また96歳の女性は、

「昔は軍人の服なんか織ってお金にしました。いまも700平方メートルの畑を私ひとりで耕しています。日記をつけはじめて20年、死んで誰かに見られたらイヤだから、よいことだけ書いてます。することが多くてボケる暇なんてない。あと人間関係にストレスを抱えてはダメ。秘訣はウソをつかないことです。家から畑まで100メートルくらいあるけど、つい見に行ってしまう」

 畑までというのが、かなりの急斜面なのだが。別の95歳の男性にも聞いた。

「月1回、1日サロンといって石和温泉に行き、秋山温泉にも毎月行きます。上野原市がサービスでバスを出してくれるんです。4人くらいで毎月、カラオケにも行きます」

 この人たちによれば、棡原で若くして亡くなったのは、「外に出た人たち」ばかりだとか。孤立を免れ、頭と体を使っている高齢者の多くは健康長寿のようだ。

 山梨県立大学看護学部の小田切陽一教授が言う。

「山梨は人と人、地域、行政などとの結びつき、信頼関係が非常に強い。高齢になっても社会との結びつきを維持できるので、孤立化を防げています。日照時間が長いのもありますね。日光を浴びるのがいいのではなく、外出する時間が増えるのです」

 それなら、日本全国どこに住んでいても真似できるはずである。

週刊新潮 2018年1月25日号掲載

特集「『平均寿命』は並でも『健康寿命』は日本一! 戦国最強だった『山梨県』のDNA」より

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。