「日本会議」をめぐるトホホなエピソード 古谷経衡氏が「日本会議黒幕説」を斬る

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ファクトがない

 もちろん、このように書く古谷氏自体が団体に取り込まれているからに違いない、と疑うことも可能だろう。また、「それは私的な印象では」とツッコむ人もいるかもしれない。

 しかし、「黒幕説」を匂わせ、危険思想の持ち主であるかのように主張している本も、丁寧に読んでいくと、実は何の証拠も示せていないのが実情である。

 ジャーナリストの烏賀陽弘道氏は、著書『フェイクニュースの見分け方』で、「日本会議黒幕説」についてファクトの有無を見る観点からの検証を行っている。

 まず烏賀陽氏は当時多数刊行されていた日本会議に関連する書籍にくまなく目を通してみた。上に挙げた『日本会議の研究』『~の正体』『―戦前回帰への情念』の他に、『日本会議とは何か――「憲法改正」に突き進むカルト集団』(上杉聰・著)、『日本会議と神社本庁』(成澤宗男・編著)、『日本会議の全貌――知られざる巨大組織の実態』(俵義文・著)だ。

 さらにこうした本の筆者の講演会にまで出かけてみることもあったという。

 そのうえで、このように述べている。

「残念ながら、私はどの本を読んでも『日本会議が安倍政権の政策決定に重大な影響力を持っている団体』という説に首肯できる事実を見出すことができなかった」(『フェイクニュースの見分け方』より)

 いつどこで誰がどのように政権にアクセスし何を働きかけたのか、あるいは具体的な利益や便宜の供与に関するファクトを示すことができていないというのである。

 さらに独自に公開情報(首相動静など)を検証もしたが、そこでも「黒幕説」を補完、あるいは証明するファクトは見いだせなかったという。そのため烏賀陽氏は、個人的には安倍政権に批判的な立場だが、それでも「黒幕説」に賛同することはできない旨を同書で綴っている。

 古谷氏もまた、こんな指摘をしている。

「(ブームの端緒となった『日本会議の研究』の)巻末にはっきりと『日本会議はそれほど大きな団体ではない』と明記している。

 つまり著者自らが、日本会議の矮小性を認めているのである。にもかかわらず、反安倍、政治的左派の、それこそ『外部から監視や点検がなく、競争のない閉鎖的な空間』の居住者は、この陰謀論的極論に飛びつく」

フリーメーソンよりも入りやすい

 こうした検証は「日本会議ブーム」のときから度々おこなわれてきたのだが、それでも「黒幕説」はなお根強い人気を持つ。古谷氏はこう皮肉る。

「日本会議には、最低年額3800円で誰でも入会することが可能だ。これにて毎月、日本会議の機関誌『日本の息吹』が自宅宛てに送付されることになっている。

 日本と安倍政権を牛耳る巨大な勢力に、3800円を払えば参加できるのだから、安倍政権を裏から動かしたいと思う人は、ぜひ日本会議の公式サイトにアクセスしてほしい。

 3800円で政権を牛耳ることができるなら、わざわざ選挙に行く必要も無い。安い買い物ではないか」

 たしかに世界規模の陰謀論で常に人気のフリーメーソンは紹介者が必要など誰もが入れる組織ではない。それと比べれば「黒幕」のわりに随分アクセスが容易な団体であるのは間違いなさそうである。

デイリー新潮編集部

2018年1月22日掲載

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