政治家たちが年末年始に読んだ注目の本まとめ

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「万巻の書を読むに非ざるよりは、寧んぞ千秋の人たるを得ん」(多くの本を読まずして歴史に残る人物になることはできない)とは吉田松陰の言葉だが、石橋湛山や大平正芳をはじめ、かつての大宰相たちはよく本を読んだと言われる。ひるがえって昨今の政治家たちはどうだろうか。年末年始といえば政治家にとっても一時の休息時間。各種SNSなどを調べてみた。

 自民党の山本朋広氏は現職の防衛副大臣らしく『北朝鮮 核の資金源』(古川勝久著)を、同じく自民党の山本一太氏は『暴君誕生』(マット・タイービ著)と『アメリカのことがマンガで3時間でわかる本』(ポール室山著)の2冊を読んだようである。日本維新の会の藤巻健史氏が取りあげているのは真山仁氏の『オペレーションZ』。歳出を半減させるために政治家と官僚が奮起するシミュレーション小説だ。立憲民主党に移籍した有田芳生氏は小野正嗣氏の芥川賞受賞作『九年前の祈り』と、元TBSワシントン支局長の山口敬之氏と係争中のジャーナリスト伊藤詩織さんの自伝的ノンフィクション『Black Box』を。

 次世代エースの呼び声もある小泉進次郎氏は、塩野七生氏の『ギリシア人の物語III 新しき力』を読み、おおいに感化されたようだ。今日発売の「文藝春秋」では両氏が対談。小泉氏は〈僕にとっては、この本が「生涯の書」の一冊になりそうです〉と語り、ノンフィクションライター・常井健一氏の取材に対しては、〈実はね、新聞10紙を読むの、止めたんですよ。「時間の使い方」を変えようと思って。新聞を読み終わった時、あまりにも残るものが少ないと気づきましたね。だったら、塩野七生さんの本を読んだ方が、時間の使い方としてよっぽど学びがある〉とコメントしている(「現代ビジネス」)。同作は弱冠20歳で古代ギリシアを統一し、大国ペルシア制圧へと出発したアレクサンダー大王を取りあげた作品だが、小泉氏も永田町の「新しき力」になれるか。

 いまや最大野党の党首となった立憲民主党の枝野幸男氏は塩野七生氏の最大のヒット作『ローマ人の物語』について「指導者や政治家のすぐそばに寄り添いながら、同時にクールで冷徹な眼を向ける独特の筆致に、教えられることが多かった」とコメントしているが、塩野氏の著作は「政治家の教科書」、定番書となっているようだ。

 ちなみに与党党首であり、首相在任最長を狙う安倍首相はどうか。映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」(17年末)、「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」(16年末)、「杉原千畝 スギハラチウネ」(15年末)を鑑賞するなど、年末年始は読書というより映画派といったところか。「DESTINY 鎌倉ものがたり」は堺雅人と高畑充希が演じる夫婦が妖怪たちの住む世界を彷徨う物語だが、今年も厳しい風の吹きそうな永田町を生き抜くため、夫婦の絆の大切さを確認したかもしれない。

デイリー新潮編集部

2018年1月11日掲載

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