日本人初!「無補給単独」で南極点に到達した荻田泰永氏が語る“私の冒険家人生”

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南極点、そしてその“先”

――そしてインタビューでは「今年(2017年)は南極点を目指す」と語っていた荻田氏。既報の通り、挑戦は見事に成功したが、なぜ北極点ではなく南極点だったのだろう。

「よく訊かれるんですが、別に深い理由があるわけではなくて、単に行ってみたいだけです。北極は2回チャレンジして、だいたいの攻略法は分かって、挑戦したいんだけど飛行機が飛ばないからできない。そんな時に、別の攻略対象として、南極のことを聞いたら、『そっちもやってみたいな』と感じちゃった。北極点はもちろんいつかはやるけれども、いまは一旦ペンディング。極地は北と南にあって、北極点を目指していたといえど、いつかは南も行こうと思っていた。『北極点の後に南極点』とは思っていたけれど、北極点に行くのが先になりそうだから、それなら南極点に行ってみようということになったわけです。

 あとは、何度も北極に行ってますからね。そうすると徐々に、行く前から先が分かった気になってしまう。初めて行った時には『これから何が起きるんだろう』という、世界の扉が開かれるような、ワクワク感があった。でも今は……ゲームやり込んだら、先が読めてきちゃうのと同じだよ。ワクワク感が欲しくなる。16年の旅では、出発前、頭の中でシミュレーションしたら、実際にその通りだった。つまり、予想外のことも起きないし、行く前から組み立てた行動をそのままできるようになってきてしまうんだよね。そうすると、道への期待感、ワクワク感って薄れるんです。

 でも南極は初めての世界。もちろん知識ではいろいろ知っています。例えば北極の場合、排泄物はそこに置いておきます。夏になって氷が溶ければ海に還りますからね。だけど南極の場合は下が大陸、微生物の活動もないので、持ち帰ることになるでしょう。

 でも、それはあくまで知識でしかない。やっぱり実際に経験してみたいんですよね。初めて北極に行った時のようなワクワク感を体験したい。だからこそ、初めての挑戦となる南極点に行ってみたいと思った。ちょうど40歳になる今年にね。南極点が終われば、また北極点を目指します。南極点の無補給単独は20人いて、北極点も世界で1人しか成功していないからね。一応2人とはなっているけど……。両極の無補給単独は誰もいません。仮に両極達成したら? 次はまだ定まっていないです。その時になってみれば、やるべきことが見えてくるでしょう」

週刊新潮WEB取材班

2018年1月9日掲載

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