監視と縛りの日常生活“ブラック集落”を避けるには 移住民が落ちた「村八分」地獄

ライフ 食・暮らし 週刊新潮 2017年11月23日号掲載

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“ブラック集落”

 だが、北杜市が常々標榜するのは「一流の田舎まち」。手をこまねいているばかりではない。担当者が言う。

「今年の春、市としてもそれぞれの自治会にアンケートを行いました。移住者を受け入れるうえでの不安材料がないかや、受け入れを歓迎するかしないか、自治会への加入率や区費・組費といった内容です。市としては、そうしたアンケートやヒアリングをもとに、移住の相談があったときに、“このあたりは移住者をウェルカムとしていますよ”とか、逆に“ここはちょっと”、といった細かいアドバイスができるように準備しています」

 不動産屋の口車に乗せられて、煽られるままにすぐに手を付け、移住してはじめて“ブラック集落”であることがわかったときには目も当てられない。たとえば、築浅なのにオーナーが手放そうとしている物件は、周辺の地域性を念入りに調べたほうがよいだろう。「暮らすに暮らせない」場所でありうるからだ。

 最後に、先頃、集落内で発生した、ある“衝突”の現場を再現してみよう。

 現在、北杜市は、中央道と軽井沢側の上信越道を結ぶ中部横断自動車道のルート決定をめぐって八ヶ岳南麓を二分する「戦争状態」にある。

 補償費を含めた現金収入につながると目論む賛成派の集落古老。これに対して移住派は、目の前が高速道路では都会と変わらないから、当然反対となる。

 公民館での会合は紛糾したという。トドメは集落古老による一言だった。

「この土地は、俺たちが信玄公から代々預かって、管理し続けてきたんだっ」

 400年以上前の武田信玄を持ち出されては、何かとインテリを自任する移住者達は沈黙するしかない。理屈ではないものが支配している社会が厳然としてあることを、悟ったのだろう。経済的に余力のある者は、「やっぱり管理費を払ってでも」と、別荘地内に“リハウス”してくるのだ。 

 結論はやはり、集落移住は×、移住するなら別荘地、ということに落ち着きそうだ。

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清泉亮(せいせん・とおる)
ノンフィクション・ライター。1974年生まれ。専門紙記者などを経てフリーに。別の筆名で多くのノンフィクション作品を手掛けてきた。近現代史の現場を訪ね歩き、歴史上知られていない無名の人々の消えゆく記憶を書きとめる活動を続けている。信条は「訊くのではなく聞こえる瞬間を待つ」。清泉名義での著書に『吉原まんだら』『十字架を背負った尾根』がある。

特別読物「大分県の人権侵害より凄絶! ゴミ出しすら許されない!? 移住天国の夢想家が落ちる『村八分』地獄――清泉亮(ノンフィクション・ライター)」より

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