宮司殺害事件の「富岡八幡宮」元日の初詣客、最終的には「ガラガラ」の現実

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茂永・真理子両容疑者が“平穏”を得る日

 そして富岡八幡宮の境内に到着。「閑散としている」というのは言い過ぎだが、混雑とは程遠い状況だ。記者は公道上から写真を撮る。何度も繰り返すが、写真だと混み合った感じが出てしまう。とはいえ実際は、住宅街に位置する無名の神社に近隣の参拝客が訪れている、というぐらいの人混みだ。

 賽銭箱に向かって、一応は行列ができている。だが、並んでみるとスカスカだ。相当数の警備員が誘導するが、彼らも手持ち無沙汰な印象を受ける。警察官も数人が立っているが、単純な警備というよりは、「惨劇の再発を防ごう」と気合を漲らせた視線を四方に向けているように見えて仕方がない。

 賽銭を投げ込み、記者は柏手を打つ。記者曰く「これまでに初詣では家内安全や仕事運の好調などをお願いしてきましたが、被害者の鎮魂や、八幡宮の安寧を祈ったのは人生で初めての経験です」とのこと。

 露店の男性従業員に参拝客について質問すると、「全然ダメ」と頭を抱える。「サンスポは『行列ができた』と書いていましたが?」と水を向けても、「あんなのは、例年に比べたら行列のうちに入らないよ。とにかくポジティブな話題が1つもないんだから話にならない。全く商売になってないよ」と吐き捨てる。

 境内で30代女性と、20代男性というカップルに話を聞く。男性は「去年も参拝しましたが、確かに人の数は少ないですね」と肯く。富岡八幡宮に誘ったのは女性のほうだといい、「私は近くに住んでいるので、初詣は毎年、ここにお参りしています。祟りとかは全く気にしないですね」と屈託のない表情だ。

 とはいえ結論としては、やはり例年より参拝客は減少したわけだ。事件の影響なのも間違いない。納得して記者が境内を出ようとすると、民放の女性記者がテレビカメラに向かって「今年は参拝客が少なようです」とレポートしていた。今回の取材における、とどめとなった。

 それでも念には念を入れて近くの蕎麦屋に入る。店内は相当に賑わっている。ビールを美味そうに飲み干す初老の男性客は「あんな事件があったから、やっぱり空いていてよかったよ」とご機嫌だ。「こんな評価の理由もあるのか」と記者は感心しながら鴨南蛮を啜った。

 日本の神社は「御霊(ごりょう)信仰」との関係が深い。政治的に失脚した人物や、戦乱での敗北者などの霊を慰めるために神社が建立されてきた。菅原道真を祀る太宰府をはじめとする天満宮が、その代表だろう。ちなみに八幡宮が祀っているのは、八幡神(やはたのかみ)こと応神天皇。富岡八幡宮が茂永・真里子両容疑者の怒りを鎮め、その霊に平穏を与える日は、一体いつのことになるのだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2018年1月1日掲載

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