恐る恐る「寿命」を測ってみた――命のロウソク「テロメア」とは

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サビつく細胞

 では、肝心のそのスピードを知るにはどうすればよいのか。田原教授は、テロメアの端に豚の尻尾(テール)のように伸び出た「Gテール」と呼ばれる箇所に着目する。その名は、遺伝情報の文字にあたるDNA中の4種類の塩基(A、T、G、C)のうち、G(グアニン)を多く含むことに由来する。テロメアは塩基の連なりからなる鎖2本の対で成り立っているが、Gテールには1本の鎖しかない。その長さも、テロメアが1万〜2万塩基対であるのに対し、Gテールはわずか200〜500塩基と短い。

 田原教授は、そのGテールの長さを簡易かつ迅速に測定する装置を開発し、世界で初めて実用化にこぎ着けた。

「Gテールが正常より短いとテロメアも早く短くなることが分かっています。つまり、テロメアが将来どのくらいの長さになるか知りたければGテールを調べればよく、また疾患リスクとの関係も、テロメアより明確に出やすいのです」(同)

 Gテールに影響を及ぼすのはストレス、それも体内で生じる活性酸素が細胞を蝕む「酸化ストレス」だという。酸素が鉄に作用してサビが生じるように、細胞もまたサビつくわけだ。

「喫煙や睡眠不足、精神的な重圧でも、細胞が酸化ストレスを受けてGテールは短くなります。私も研究費の申請書を書くため徹夜が続いた時期に測ったら、短くなっていました。目に見える変化が年単位でしか現れないテロメアに対し、Gテールは1週間単位で大きく伸び縮みします」(同)

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