平均寿命世界一! 「香港人」の運動習慣 急勾配を上る80歳、スクワット100回超の74歳…

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急勾配を上り下りする80歳

 香港老人の朝は早い。現地在住の医療コンサルタント・堀眞氏によれば、

「6時前の始発バスに乗っていると、杖を使ってゆっくり歩いたり公園の健康器具で運動したり、また太極拳をしている方を街中でよく見かけます。70代の方々がグループで山歩きをすることも多い。皆さん、ご自分の体力に合わせて外出を楽しんでいるのです」

 ある朝、新界の川龍(シェンロン)村にある飲茶(ヤムチャ)店を訪ねた。英領だった影響もあり、香港は各所にハイキングコースが整備されている。

 この店もそうしたコースの中間にあり、7時過ぎにはすでに数人の客が朝食をとっていた。店に隣接するクレソン畑を抜け、麓から運行しているバスの通らないルートを歩く。緑が生い茂る中、道のりは決して平坦ではない。

 途中、両腕を勢いよくグルグル回す女性に出会った。聞けば87歳だという。

「毎朝1時間半かけて下からゆっくり歩いて、ここで体操をして、それから飲茶をします。習慣になっているから全然辛くありません。あなたが来たから30回で止めたけど、もうちょっとやってからまた歩くわ」

 坂道に彩られた香港。せっかくなので、市街で最も急とされる峻坂に向かってみた。香港島中心部、湾仔(ワンチャイ)の「寶雲(ボーウェン)道」という全長3キロのハイキングコースの中腹に公園があり、ここに麓から延びているのが「湾仔峡道」。場所によって45度の急勾配だというのだが、坂の頂上で待つと、あたかも吸い寄せられるかの如く、次々と高齢者が上ってくる。

 80歳の女性・李(レイ)さんは、

「香港人が日本人より長生きだなんて知らなかった」

 そう驚きながら、

「30年以上前から毎朝、40分ぐらいかけて坂を上ってます。明日は、孫の7つの誕生日だから休むけどね」

 同じく45年間上り下りを続けているという79歳の男性・姚(ヤウ)さんは、

「昔は10分で上れたけど、今は15分かかるかな」

 と言いつつ、下り始める。つま先で踏んばらないとつんのめりそうな傾斜だが、あろうことか彼は途中のベンチで腹筋運動を始めた。

「回数は適当に疲れるまで。今日は50回にしておくよ」

 さながら“健者の楽園”である。ともあれ我々も、坂道を見たら上りたくなるようでなければいけない。

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