百寿者が23人「隠岐の島」の秘密 サザエカレー漁師飯と後醍醐天皇も飲んだ“命の名水”

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 健康長寿の秘訣としてよく挙げられるのが魚、そして水である。島根県内でその両者に恵まれている地域といえば、たとえば隠岐の島町。実際、町内の百寿者は23人にも上り、海の幸の美味に舌鼓を打ち、名水で喉を潤していた。

 長寿と就労率の関係はよく知られるが、隠岐の島の人たちもよく働く。

「漁村では男性は船を持っているから、80歳や90歳になっても魚釣りに行ったり、箱メガネで水中を見て銛を突いたり。女性も冬は磯の海苔を摘んで、板に貼って岩海苔を作ったりします。男女とも身体が動くうちはよく働くし、この島は平地が少ないので足腰も鍛えられると思います」

 そう語るのは、隠岐広域連合立隠岐病院の加藤一朗診療部長。こうした活動が元気の源である証拠には、

「夏から秋にかけてはウニやサザエが採れ、稲刈りもあるから、みな忙しくて病院にこない。これからは家の中にいて身体を動かさないから、体調が悪化して病院にくる人が増えます」

 隠岐の島の働き者にも聞いてみた。葛西清秀さんは86歳の現役漁師である。

「59歳まで中学校の校長でしたが、教師時代も土日は漁に出ることがありました。今も月に5、6回、波がよければ漁に出ます。船は二つ持っていて、大きい船で漁に出る日はレンコダイやヨコワ、カツオなどの一本釣り。小さい船は湾内の網漁に使います」

 むろん、高齢者たちの旺盛な活動を支えるのは、食生活である。葛西さんは、

「魚は夜に食べますが、買うことはなくて、自分で獲る。一番好きなのはカツオの刺身。イカも刺身にしたり煮たりして食べます」

 と「漁師飯」中心の食生活を披露。加藤診療部長によれば、

「島でよく食べるのは、イカやアジ、レンコダイ、ヒラマサ、イシダイなどですね。かつては肉が手に入りにくく、今の60代以上の方は魚中心の食生活でした。カレーライスにもお肉代わりにサザエを入れていたほどですからね」

 サザエ――。どうやらこの高級な貝が、この島のポピュラーな食材であるらしい。島の漁師、吉田篤司さん(69)も、

「隠岐の島町には漁師が200〜250人いて、イカ獲り、一本釣りや、サザエを三叉銛で突いたり」

 と語る。そこで隠岐の島町中村にある「さざえ村」の佐々木雅秀村長に聞いてみると、

「サザエは年がら年中あって、どこででも手に入るから、島では価値が理解されていないほど。刺身はもちろん、炊き込みご飯にしたり、カレーライスに入れたりします。足の部分はコラーゲンが、奥の身はミオゲンなどのたんぱく質が豊富。エキスには貝類の旨味の特徴であるコハク酸が、アワビの約2倍も含まれ、ビタミンやミネラルも豊富。自然が生んだ栄養食品です」

 また隠岐の島の百寿者で、

「90歳までは、家の近くの畑で白菜や大根などを作ってました」

 と語る永海アキミさん(100)に、食生活を尋ねると、

「魚ならイカも食べるし、ダルマ(メダイ)やイサキを煮たもの、塩サバ、シイラの刺身やフライなんかを食べます。甘いものも好きだし、 お酒も若いころから、お刺身を食べるときなんかに、ちょびっと。だいたい地元の『隠岐誉』ですね」

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