百寿者が23人「隠岐の島」の秘密 サザエカレー漁師飯と後醍醐天皇も飲んだ“命の名水”

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長寿の水

 言うまでもないが、美味い酒を造るには名水が欠かせない。隠岐誉を製造する隠岐酒造の金阪幸彦営業企画統括課長が語る。

「島根県では2カ所が環境省の“名水百選”に選ばれていますが、 ともに隠岐郡。うち一つが隠岐の島町の壇鏡の滝湧水です。この島は対馬暖流のもたらす雨や霧によって豊かな森に恵まれ、良質な水が至るところから湧き出て、清冽な仕込み水に恵まれている。酒を造るうえで人やコメは移動できても、水は動かせませんから、とても大事です」

 ちなみに、隠岐酒造では大満寺山の湧水を使い、

「軟水のため口当たりが柔らかく、味はすっきり。ですので、さわやかで辛口のお酒を造っています」

 とのこと。だが、水量こそ豊富ではないが、名水として由緒正しいのは島西部にある壇鏡の滝である。

 隠岐の島町役場観光課に尋ねると、

「地元の人々の間では長寿の水、勝ち水として知られていて、正月などの節目に汲んで使う、というように大切にされてきました。今も壇鏡の滝の湧水を生活用水として汲みにこられる地元民もいます。とにかく長寿のいわれはあって、長寿の滝水でも飲んで元気になろうよ、という気持ちで大切にされてきた滝だとは言えるでしょう」

 その結果、実際に長寿が実現しているわけだから捨て置けない。

「隠岐の島には古典相撲や牛突き(闘牛)などの伝統行事があり、そうした祭事の前夜に身を清める水としても、壇鏡の滝の湧水は知られています」(同)

 高さ40メートルの岩壁を流れ落ちるこの滝の近くには、古くから壇鏡神社が祀られている。隠岐の島は、奈良時代に遠流の地と定められて、以来3000人以上が流されたという。そのなかにはかの後醍醐天皇もいたが、

「後醍醐天皇も口にしたかもしれませんね」(同)

 討幕に失敗し、無念のまま遠流の身となるが、脱出して建武の新政を打ち立てた天皇の不屈の闘志は、隠岐の島の水に支えられたものだったのだろうか。

週刊新潮 2017年12月7日号掲載

特集「5年連続『100歳以上』が日本一多い 超寿王国『島根県』の秘密はまだあった! 」より

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