「雙葉小学校」vs.「三菱地所」四谷の日照権トラブル

国内 社会

2017年11月22日

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 進学校として東京私立女子御三家の一角を占め、お嬢さん学校としても名高い四谷の雙葉(ふたば)学園の脇に、マンションが建つというから、さあ大変。建設主の三菱地所レジデンスとの間に、大バトルが始まった。

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〈年間を通じ、小学校校庭は午前中日影となり、とりわけ冬には児童が在校する大半の時間帯、小学校の校庭と教室が日影に覆われます。(中略)同計画は、子ども達が学校で過ごす間に受けられる日照の大半を奪うものであり、その健康・心身の成長に悪影響を与えることは明らかです〉

 そう趣旨が記された〈陳情へのご賛同と署名へのご協力のお願い〉が今、雙葉学園の保護者に配られている。11月半ばまでに千代田区議会に提出するという。

 事の起こりは、雙葉幼稚園・小・中・高校の中でも、小学校に隣接した土地の相続問題。地権者が語る。

「代々私たちが住み暮らした場所で広さ300坪。父の死後、子供4人で分割相続しましたが、今はみな後期高齢者。いずれの家も老朽化したり荒れ果てたりしている。そこに三菱地所レジデンスの方が見え、“土地を一筆にまとめてマンションにすれば、等価交換で安心して老後を送れる住まいが確保できる”“法令に違反せずに9階建てまで建てられる”と言う。私たちがこの土地で暮らし続けられるのなら、と思ってマンション建設を決断、8階建てに譲歩し、教育環境の保全にも配慮したのです」

 だが、10月14日午後4時から雙葉の講堂で行われた建設主側の説明会は、保護者やOG600人が詰めかけ、揉めに揉めたという。参加した保護者によれば、

「最初の約1時間半は専門用語混じりの文章を読み上げるだけ。一人の保護者の質問を機に、質問が活発になっても、先方は煙に巻こうとするばかりでした。主に喋ったのは、マンション建設の際の住民対策などを生業とする会社、ランの方。結局は“建設計画に変更はない”との答えでした」

 夜8時まで、押し問答が白熱したそうだ。

「たとえば、今の計画ではマンションの南側に車寄せを作り、建物をギリギリまで学校側に寄せ、マンションの日照を確保している。せめて建物を南に寄せるなどの譲歩があってもいいと思うのに、一切ない」(同)

「雙葉ができる前から」

 もっとも、説明したランの野澤勉代表に聞くと、

「今回のように手前どもの説明を一切聞かず、一方的に罵詈雑言を投げつけられたのは初めてのケースで、当惑しております」

 と、少々ニュアンスが異なる。何はともあれ、美智子皇后も小学6年まで通われた雙葉学園のOGたちは、どう眺めているのだろう。

「大変憂えており、私もできるかぎり協力して参りたいと思っております」

 と、帝京科学大学の小堀馨子准教授。東京藝大名誉教授の木幡和枝さんは、

「雙葉は多くの学校が移転する中、東京の真ん中に留まっているから、マンション話が持ち上がるのも仕方ないかと思う一方、日照の問題があるなら、学校関係者が建設反対の声を上げるのは当然だと思います」

 先の地権者の話には、

「うちは雙葉ができる前からここに住み、雙葉が幼稚園をここに移転させるときは、工場を閉めてまで土地を譲って差し上げたのに」

 と、恨み節も混じるが、

「日本人は、土地への私権は不可侵だと思っているが、個人の権利は公共の福祉に役立つときだけ保護される、という考えの欧米では、地権者や建設主が譲る」(経済ジャーナリスト)

 三菱地所レジデンスは、

「頂戴したご意見やご要望を真摯に受け止め、共同して建物計画を取り進めている地権者とともに対応について検討している次第」

 と回答し、雙葉学園は、

「子供たちの健康と教育に良好な環境を維持することが最優先。(中略)双方にとって良い結論が得られることを期待しております」

 と答えたが、まだ結論の影さえ見えない。

週刊新潮 2017年11月16日号掲載

ワイド特集「ざんねんなにんげん事典」より