あの捏造記事はどこで一線を越えているのか――有馬哲夫教授が「文春」に反論

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韓国側に取り上げられていたら…

 そもそも、「どうせバレないだろう」とお手軽に捏造に走るのは、読者を軽く見ている証拠だ。私が持っている占領軍文書は、占領期に日本の知識層にもっとも支持されていた月刊誌としてGHQは「改造」(現在は廃刊)と「文藝春秋」をあげている。週刊誌の方だとはいえ、あとの時代のことだとはいえ、支持してくれているレベルの高い読者を愚弄するような捏造記事を載せてもいいものだろうか。週刊文春の読者とは、捏造であっても、韓国軍が慰安所を経営していたと書けばよろこぶようなレベルの人たちなのだろうか。「違うだろー」といいたい。

 しかも、この捏造は、朴槿恵の急所ではなく、安倍政権の急所になる可能性があった。韓国政府は「慰安婦」関連資料のユネスコ世界記憶遺産登録を目指していることもあって、最近アメリカ国立第2公文書館には、約10人ほどの韓国人研究者が常駐している。彼らが先にこの捏造に気がついていれば、どうなっていたかは想像に難くない。この記事の作者およびリサーチャーは、そんなことにも気がついていないのだ。とんだ安倍政権の掩護射撃もあったものだ。あやうく首相の背中に弾を撃ち込むところだった。週刊新潮編集部が告発したおかげで、韓国側はこの件を「日本のマスコミの捏造」ではなく「週刊文春の捏造」といわなければならなくなった。というのも、もし、週刊新潮や他の日本のメディアが捏造を告発する前に、韓国政府や韓国メディアが大きく取り上げるようなことになっていたらどうだろうか。これまで、この問題を放置してきた日本のマスコミ全体が、捏造に加担していたようなものだと批判されていたかもしれないのだ。

 この捏造記事にもっと深い闇があることをうかがわせるのは、私に取材した(実際は「捏造」という言葉の執拗な撤回要請があった)週刊文春のO記者も同じ捏造の手法をとっていることだ。

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