あの捏造記事はどこで一線を越えているのか――有馬哲夫教授が「文春」に反論
週刊文春に、当時のTBSワシントン支局長・山口敬之氏が〈歴史的スクープ 韓国軍にベトナム人慰安婦がいた! 米機密公文書が暴く朴槿恵の“急所”〉を寄稿したのは、2015年4月2日号においてである。
それから2年半が経過したが、この記事が捏造だったことは、週刊新潮が2度にわたって報じた通りである。その詳細については、配信中記事「文春スクープ『韓国軍に慰安婦』記事に捏造疑惑 山口敬之のもう一つの“罪”」「山口記者の週刊文春『韓国軍にベトナム人慰安婦』記事はやはり捏造だった」ほかを参照いただきたい。
さて、ここでは、その新潮の一連の記事の中で、問題となった公文書について解説をした有馬哲夫・早大社会科学部/大学院社会科学研究科教授の原稿をご紹介する。文春は新潮の捏造告発を受けて、〈捏造記事の指摘に答える〉という内容の記事を展開している。そして、その取材の過程で有馬教授にも取材を行ない、コメントを掲載している。有馬教授は、この記事によって名誉を傷つけられたと主張しているのだ。
文春の取材記者とのやりとりを明らかにしながら、捏造問題の深い闇に迫る。
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マスコミで働く記者はいつも時間に追われている。毎週発行しなければならない週刊誌記者の忙しさは想像を絶する。テレビとなると、とってきたばかりの映像の編集が放送開始時に終わっておらず、放送中に行ってようやくオンエアに間に合わせるということも稀ではない。
記事や番組の素材を集めなければならないが、これは思い通りにいくことはまずない。素材を提供してくれる人は見つからず、時間が迫っていれば、その人が信用できる人なのかもチェックしていられないだろう。その怪しい証言者ですら、記者の思った通りのことを話してくれないのだ。すべてに完璧を期していたのでは時間が足りないし、体ももたない。どこかで「折り合い」をつけなければならない。
とはいえ、この「折り合い」をつける場合でも、次のことは最低限でも守らなければならない。1.事実を知るための努力を最大限する。2.知り得た事実を誠実に読者に伝えようとする。3.努力しても、まだ不十分と思ったとき、先送りしたり、ボツにする。
ところが、記者のごく一部だろうが、だんだん「悪ずれ」してくると、次第にこの3つを自分に課すことをしなくなる。そして、平気で記事・番組を捏造して読者・視聴者に対する背信行為を働くようになる。
問題の記事「歴史的スクープ 韓国軍にベトナム人慰安婦がいた! 米機密公文書が暴く朴槿恵の“急所”」の大要は以下の通りである。山口氏自身が見つけたという公文書が、韓国軍にベトナム人慰安婦がいたと断定しており、裏付けの補強取材として行ったインタビューで米軍元大佐や博士らもそれを証言しているという内容だ。記事の作者が越えてはならない一線を越えているところは、先に指摘した3つのルールを守ろうとしていないことだ。
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