「サケ孵化場」窃盗事件 “猟奇的”犯行は誰が

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 打ち捨てられていた96体もの死骸はいずれも腹を切り裂かれ、取り除かれていたのである……イクラを。

 北海道の道南でサケの卵が盗まれる事件が相次いでいる。10月9日には八雲町の捕獲場から25匹の卵(約20キロ=16万円相当)、24日は岩内町の孵化場から173匹(87キロ=69万円)、翌25日は函館市の孵化場から96匹(77キロ=61万円)、さらに26日には上ノ国町の孵化場の池の水が抜かれ、オス・メス24匹が盗まれた。

「今年は特にサケが不漁で、筋子やイクラも昨年に比べ倍近い値段になっているから狙われているのでしょう。それにしても酷いことをする。ジョロンコなんて普通は食べないのに……」

 と嘆くのは、北海道さけ・ます増殖事業協会副会長の濱野勝男氏である。ジョロンコとは畜養池で成熟させた採卵前の卵のこと。

「8月から11月頃にかけて産卵のためサケは川に帰ってくる。それを生け捕りにして、畜養池で産卵まで育てるわけです。ちょうど産卵期だったので、卵はバラ子で、取り出すのに手間はかからない。腹を切ればザーッと出てくるから、1匹1~2分もあれば取り出せる。とはいえ、成熟したジョロンコの皮は固いから、薬品で柔らかくしないと商品にはならないんですよ。加工業者にも持って行かなければいけないから、素人でないことは確か」(同)

 昨年、知床の斜里町でサケなど149匹を密漁し逮捕された男は暴力団員だった。

「暴力団の資金集めを目的とした組織的な密漁だったと判明しました。また、2013年にえりも町では、孵化場から約400匹分もの卵が盗まれ、監視カメラを設置するなど対策を進めてきました。サケの密漁、盗難はこれまで道東などが多かったため、道南は対策が遅れているのも狙われた原因かもしれません。今回も暴力団なのか、あるいは外国人の犯行という声も聞きます」(地元記者)

 組織的犯行でなくとも、たった1匹の密漁で逮捕された例もある。割のいい犯罪などありはしない。

週刊新潮 2017年11月9日神帰月増大号掲載

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