女の生き方を問う隠れた問題作 小泉今日子主演「監獄のお姫さま」に残るやりきれなさ

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男女は真に歩み寄れるのか

 第2話のハイライトは何と言っても、カヨが夫を刺してしまった“過去”と、カヨが板橋と口論する“現在”の場面を重ねる巧みな演出だろう。浮気した夫をはずみで包丁で刺し、殺人未遂で捕らえられたカヨ。夫の浮気のきっかけは、カヨが仕事で自分よりも成功したことが理由だ。子育てが済んでから、仕事に復帰してキャリアを積み、成果を上げた妻に、社会的地位を追い越されることは、夫にとって屈辱なのか? そうだとしたら、女たちはいつまでも夫より下がって、目立たず暮らさなければいけないのか? 女たちの軽妙なやり取りに笑いをこらえながらも、やりきれなさが残った。

 また、誘拐、監禁され、弱い立場となったはずの板橋が、カヨに何を言われても、あきれたように「要点をまとめろ」とだけ言い放つのも悲しかった。板橋は女を徹底的に見くびっている。たとえば板橋の妻(乙葉)はEDOミルクのCMに出演したタレントであり、美女ではあるが夫に従順である古風な妻そのものだ。妻は自分を飾るアイテムであり、自分の野心のためには過去の婚約者さえ陥れることをいとわない。そんな板橋に対して、徒党を組んで脅迫するしか女たちに手だてはないのか? それ以外のやり方で、男女が真に歩み寄る方法を、どうかこのドラマでは描いてほしい。

 時間軸を行き来しながら物語は進む。来週はいよいよ、今作の軸、“爆笑ヨーグルト姫事件”の加害者とされている「姫」こと江戸川しのぶ(夏帆)が刑務所に収監されてからの様子が明らかになるようだ。果たして姫は、出所した女たちに守られるだけの「お姫さま」なのか。いずれ「姫」が、みずからの運命と果敢に戦う様子も期待したいところだ。

西野由季子(にしの・ゆきこ)(Twitter:@nishino_yukiko) フリーランサー。東京生まれ、ミッションスクール育ち、法学部卒。ITエンジニア10年、ライター3年、再びITエンジニアを経て、永遠の流れ者。新たな時代に誘われて、批評・編集・インタビュー、華麗に活躍。

2017年10月26日掲載

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