女の生き方を問う隠れた問題作 小泉今日子主演「監獄のお姫さま」に残るやりきれなさ

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 豪華女優陣の共演、また宮藤官九郎による脚本のトリッキーさでも話題になった「監獄のお姫さま」第2話が、10月24日に放送された。2017年のクリスマス・イヴに、大企業の社長である板橋吾郎(伊勢谷友介)を誘拐、監禁するまでを描いた初回に続き、今回は時間を2011年秋に移し、女囚たちの過去が描かれた。

 話は、夫への殺人未遂事件で、馬場カヨ (小泉今日子)が5年の実刑判決をうけ、 「自立と再生の女子刑務所」 に収監されるところから始まる。もはや名前ではなく“69番”という番号でしか呼ばれなくなったカヨと、相部屋の女性たちが、紆余曲折を経てなんとなく一体感を得ていく過程は、殺伐とした刑務所の描写においてほっとさせるものがある。また、脱税と所得隠しで服役しているカリスマ経済アナリスト、勝田千夏を演じる菅野美穂。NHK「ひよっこ」での大女優・川本世津子役が記憶に新しいが、意地悪ながらもチャーミングな姿はそうした様々な役をものにしてきたベテラン女優の品格が漂っていた。

 そんな中、私が注目してしまうのは、囚人たちに厳しく号令をかけていく刑務官・若井ふたばを演じる満島ひかりだ。満島ひかりは舞台経験も豊富であり、2015年の「ハムレット」(演出・蜷川幸雄)ではオフィーリア、2016年「かもめ」(演出・熊林弘高)ではニーナなど、可憐でかよわい役を演じているものの、いまいちハマらないのを私はかねがね惜しく思っていた。天性の気の強さが生かされないと、満島ひかりは輝かない。しかも彼女はあふれる感情を押し殺した状態、つまりカメラが寄った状態で、細やかな表情を映されてこそ真価を発揮する「映像女優」なのだ。それを見抜き、冷徹な刑務官役を当てた脚本家・宮藤官九郎の目は確かである。

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