深海で今夏同時発見「インディアナポリス」と「伊58」 2人の艦長の苦悩

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晩年の交流

 そして自殺から28年後、1996年のことである。フロリダ州に住む12歳の少年が、映画「ジョーズ」をテレビで見たことから事態は動いた。少年は作品で触れられたインディアナポリスの撃沈に興味を抱き、独自に調査を始める。これに生存者らが協力し、マクベイの名誉回復運動が沸き起こったのだ。

 少年とその協力者らは秘密文書にもたどり着き、当時の海軍上層部が、インディアナポリスの通過海域に伊58が潜んでいることを事前に察知していた証拠となる文書も見つけ出した。

 海戦から40年後に生まれた少年によって図らずも第三幕は開かれたわけだが、橋本もまた、その終幕を最後まで演じ切ったという。

 戦後は商船会社などに身を置き、一時は自衛隊向け潜水艦の開発にも携わっていた橋本は、昭和51年(1976年)から実家で神職に専念していた。現在、その梅宮大社で宮司を務める長男の以裕氏(77)は、大戦末期に米海軍を震撼せしめた父について、こう証言する。

「伊58は、日本の潜水艦で初めてレーダーを装備したのですが、これは父が繰り返し上層部に要求し、認めさせたと聞きました。回天の乗員を除けば、父が艦長を務めた潜水艦では一人の死者も出していません。父は生前『日本軍は死ななくてもいいところで将兵を死なせてきた』と話していた。命を重んじて戦った軍人だったと思います」

 マクベイについては特段、話を聞かされた記憶はないとしながらも、父親はその遺族とは節度を保って交流を続けていたという。

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