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自衛隊員のことを本気で考えよ 百田尚樹・青山繁晴が議論

■相変わらずの国会“論戦”

参議院議員の青山繁晴氏(右)と作家の百田尚樹氏(左)

 金正男氏の暗殺に関連しては、まだ不明な点が多々あるが、改めて多くの人が感じたのは、あの国は合理性や国際世論とは関係なく、何をするのかわからない、ということだろう。そして、そんな国が日本を公然と敵視し、常に挑発的な行動を繰り返しているのもまた事実である。

 ところが、日本の国会では安全保障に関連して、何とも呑気な議論がここのところ行なわれていた。野党は失言狙いで、「戦闘」の定義は何だ、と聞き続ける。そこに大臣の下手くそな答弁が繰り返される。不毛なやり取りを見て、うんざりした方もいることだろう。

 多くの国民が期待しているのは、たとえば次のような本質的な議論なのではないか。作家で参議院議員の青山繁晴氏と作家の百田尚樹氏の新刊『大直言』の第1章「憲法を議論する」の中から一部を引用してみよう。

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■自衛隊員に「違法行為」を強いるな

百田 拉致問題について、実はほとんどの国民は、自分とは関係ないと思ってるんです。被害者が100人だとしても、国民全体から見れば少数派ですから。そのせいで自分の生活には直接関係ないと、みな思っているところがある。しかし、これは青山さんの仰ったとおり、いつ自分がそういう身になるかわからない問題なのです。

 現実に、比較的最近、1999年に能登半島沖不審船事件というものがありました。海上保安庁の船が不審船を石川県の沖で見つけて追跡した。ところが、不審船が非常に速かったので、自衛隊が引き継いで追跡した。この時、戦後初めて海上警備行動として海上自衛隊の護衛艦2隻が動いた。

 止まれ、止まれと言って停船を求めるんですが、当然、相手は止まらない。ですから、そこで警告射撃をするんですが、これを船に当てることはできないんです。なぜなら自衛隊は、あくまで相手が攻撃してきた時に、正当防衛で戦うことはできるんですが、相手が攻撃しないものに対して銃とか大砲を撃つことはできない。それで、仕方なく、船の周りに、警告射撃をするわけです。

 しかしその警告射撃ですら、内閣の了解を得るのに時間がかかる。

 不審船となってますが、相手が北朝鮮の工作船なのは明らかで、当然、北朝鮮の工作員は、憲法9条も知ってます。ですから、自衛隊が攻撃してこないのを知ってる。悠然と逃げていくわけです。

 自衛隊は、ひたすら追いかけていくだけ。追いかけていって、ここで非常に不思議なことが起こりました。不審船が――おそらくエンジントラブルといわれてますが――止まってしまったんです。

 ここで自衛隊側は悩んだんです。どうするか。おそらく、この不審船の中に拉致された日本人がいる可能性がある。当然、船に乗り込んで臨検しなければならない。

 ところが、その自衛艦に乗っていた隊員たちは防弾チョッキも何も持っていないんです。当然、相手は武器、おそらくピストルくらいは持っていると考えられる。

 行くだけで命懸けです。じゃあ、どうするか。この時に、命令は出せないので、志願を募ったんです。すると、乗組員24人全員が「志願します」と。素晴らしいことです。

 しかし防弾チョッキもない。それでどうしたかといえば、艦内にあるマンガ本とか雑誌を体中に巻いて紐でくくって、乗り込もうとしたんです。

 ところが、まさに、その乗り込む直前に、向こうの不審船がエンジンが直って、再び逃げ出してしまった。それをまた追いかけていって、最終的には北朝鮮の領海内に入って、とうとう逃げられてしまったんですが。8時間か9時間追いかけたんです。

■本気で自衛隊のことを考えよ

青山 本来、拉致被害者が乗っていようがいまいが、主権国家だったら、必ず接舷して臨検しなければいけないんです。

百田 実際には、船内に拉致被害者がいたかどうかわかりません。調べることができなかったので、明らかにはなっていないだけで、いた可能性があると言われてるんです。仮に甲板に日本人が乗ってて、助けてくれと言うてた場合、じゃあ、自衛隊は何ができたのか。どうもできないんですね。

青山 できません。ただし、自衛隊の名誉のために言っておけば、隊員たちの意識は別なんです。私の経営している(対談当時)独立総合研究所では、毎年2人自衛官を研修で受け入れています。今までうちに来た研修生に、こういう問題を尋ねると、1人の例外もなく「たとえ法律違反を問われ、場合によっては死刑になろうとも、日本人を助けるために動きます」と答えます。「日本人を助けるために乗り込んで、相手が撃ってきたら、あるいは撃とうとしたら撃ちます」と。それは海上自衛隊に限らず、もしも我が国が爆撃されそうだと思えば、航空自衛隊は法律も危険も乗り越えて命がけの行動に出てくれるでしょう。

 こういうことを踏まえないSEALDsの諸君に、「自衛隊の命を守れ」とデモで言われても……。

百田 片腹痛いです。以前、「虎ノ門ニュース」の企画で、お話を伺った、特攻隊の生き残りの加藤昇さんは、こんなことを仰っていました。

「憲法9条って竹光みたいなもの。日本刀じゃないでっせ。部分戦争が永久に起こらないという確証はないですよ、その時に誰が防ぐのかいうたら、男しかないでしょ」

 もう1人、元零戦搭乗員の藤本さんは、こう仰っています。

「自分の国は自分で守らなければいかん。自分の国は自分で守ると。これが原則だと思います」

 護憲派の人たちは二言目には「歴史に学べ」と言うけれども、こういう先輩方の言葉をどう受け止めるんでしょうか。

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 むろん、PKOで活動する自衛隊員の安全も極めて重要な問題である。しかし、国会での議論を見る限り、本気でそれを心配して「追及」している人は少ないように感じる人も多いのではないか。

デイリー新潮編集部

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