法人税減免の金でゴルフ選手権… 「JAL」の厚すぎる面の皮

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 喉元過ぎれば、熱さを忘れる企業は少なくない。不正や不祥事が発覚しても、しばらくすると何食わぬ顔でCMを流したり、スポーツ選手のスポンサーを務めている。なかでも面の皮の厚さという点でいえば、7年前に経営破綻した日本航空(JAL)の右に出る企業はないのではないか。

 9月5日、米国シニアツアー「PGAツアーチャンピオンズ」日本大会へ出場する選手たちが首相官邸を表敬訪問した。“趣味はゴルフ”と公言する安倍総理は、上機嫌で今年2月の訪米でトランプ大統領とプレーしたことに触れて、

「次に備えて、是非、トランプ大統領に勝つ秘策を教えて欲しい」

 PGAツアーチャンピオンズが日本で開催されるのは初めてだという。スポーツ紙のゴルフ担当記者によれば、

「出場するのは、メジャー8勝を挙げたトム・ワトソンを筆頭に伝説の選手ばかり。日本のゴルフ史に残る“快挙”だと思います」

 賞金総額250万ドル(約2億7750万円)。この大会は、JALが冠スポンサーを務める「JAL選手権」だ。むろん、テレビ中継もあった。

「主催のPGAとの契約の関係で、JALは負担金の総額を公表していません。ですが、優勝賞金を除いても、招致活動に始まり、宣伝広告や大会運営、そして選手やその家族のためにチャーター機まで飛ばしているので莫大な費用が掛かっている。費用の総額は5億円は下らないといわれています」

 ちなみに、8日から3日間行われたJAL選手権は、コリン・モンゴメリー選手が通算14アンダーで優勝した。

法人税を納めるのが先

 大会が成功裏に終わり、JALの植木義晴社長(65)も、さぞ安堵したことだろう。

「官邸への表敬訪問の当日にトラブルが発生したので、植木さんは気が気でなかったのではないでしょうか」

 こう苦笑するのは、JAL関連会社で役員を務めたOBだ。

「安倍総理と選手が面談した約6時間前、羽田発ニューヨーク行きの飛行機が離陸直後に左エンジンから火を噴いて、羽田空港へ引き返すトラブルがあったのです。原因は、鳥が衝突する“バードストライク”が有力ですが、現在調査をしています。幸い乗員、乗客251人は全員無事で、約6時間半後に別機で再出発しました。ですが、乗客に対して金銭的な補填をしたとは聞いていません」

 昨年度決算で、JALの営業利益は1703億円。カネの使い方を勘違いしているのではないか。欧州系航空会社の日本法人幹部は、冠スポンサーになったこと自体が問題として、

「経営破綻したJALは、会社更生法が適用され法人税減免の恩恵に与っている。その額は、実に9年間で4300億円以上。見方を変えれば、潤沢な現金が手元にあります。今回の大会招致費用などにも、この資金が充てられている。冠スポンサーになるならば、“減免措置”を返上して適正に法人税を納めるべきではないでしょうか」

 法人税減免期間中に冠スポンサーになったことを、JAL広報部に聞くと、

「ご批判の声については真摯に受け止めますが、政府が進めている訪日促進も目的の一つであり、両国政府も支援する当大会に協賛し、お手伝いをできることについてご理解いただきたいと思います」

 ゴルフ大会開催で訪日客が増加する? JALは、喉元を過ぎる前に熱さを忘れてしまったようだ。

週刊新潮 2017年9月21日菊咲月増大号掲載

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